記帳は、税務申告等のためにやむをえず行うと考えられていることが多い。
記帳が「必要」なことは事実だが、それだけではない。帳簿の情報は、その企業についての貴重な情報を与えるのだ。
その情報を企業経営にフィードバックするという観点が重要だ。
これまでは、帳簿ができるのに時間がかかってしまうので、この目的に利用しにくかった。記帳作業を自動化してリアルタイムで企業の状況がわかるようになれば、それを経営判断に用いることができるようになる。
これは、「データドリブン経営」と呼ばれるものだ。
企業経営にデータが必要なことはいうまでもないが、「データドリブン経営」はもっと積極的な内容を含んでいる。
つまり、得られたデータのいかんによっては、経営の基本方針まで変えることを意味するのだ。
これは、企業経営に関するこれまでの通念に大きな変更を迫るものだ。
日本の企業では、これまで「経営者の経営哲学が重要」としばしば言われた。とくに、オーナー企業(創業者やその一族が経営している企業)の場合にそうだ。
経営哲学がうまく機能すればよい。しかし、一度は成功しても、その後に時代が変わり、それまでの哲学が通用しなくなることがしばしば生じる。そうした場合、経営哲学は、企業の経営を誤らせる根本原因になるのだ。
データドリブン経営では、データを哲学より上位に置くことによって、こうした事態を避けることができる、
企業の状況についてリアルタイムの情報を得る
ところで、データドリブン経営を行うためには、企業の状況についてのデータが必要だ。ところが実際には、データが得られるまでにかなり長い時間がかかる場合が多い。大企業であっても、経費についての詳しい情報が集まるまでには、1カ月程度かかるだろう。
ましてや、中小零細企業の場合には、年に1度の決算にならないと企業の状況が定量的なデータによってはわからない、といったことがありうる。
ところが、銀行APIによって銀行の取引データがわかれば、企業の状況はかなり正確にわかる。
こうして得られるデータをあらかじめ用意されたプログラムで処理すれば、企業の状況をリアルタイムで把握することが可能になるだろう。
ルーチン的な決定であれば、このようなデータを反映して自動的に経営方針を変えることもできる。そのような企業は、DAO(自律分散型組織)と呼ばれるものだ。それに向かっての道が開けるかもしれない。
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