日本中を太陽光パネルが埋め尽くす未来の現実味 脱炭素達成に向けた厳しい道のり
同省が電力中央研究所の分析などを基に示した試算によると、約370GWの太陽光発電導入を実現させるためには下記のような取り組みが必要となる。
屋根置き型の太陽光発電では、米カリフォルニア州が20年から新築住宅に設置を義務付けており、小泉進次郎環境相は折に触れて設置義務化に意欲を示してきた。3月の記者会見では、住宅への太陽光パネル設置の義務化などがなければ、「カーボンニュートラルは実現できない」と発言。4月の日本経済新聞とのインタビューでも、住宅やビルへの太陽光パネルの設置義務化を考えるべきだと語った。
次期エネルギー基本計画を議論する経産省の有識者会議のメンバーでもある国際大学国際経営学研究科の橘川武郎教授(エネルギー産業論)は、新築住宅への太陽光導入は将来的に「100%近くになる可能性はあるが、既存住宅はそう簡単にはいかない」との見方だ。経産省によると、国内の戸建て住宅約2900万戸のうち約35%が耐震強度の問題で太陽光パネルの設置が困難とされている。
農業と太陽光の両立
住宅の屋根にパネルを設置するだけでは十分ではない。6月に見直された政府の「グリーン成長戦略」には農地を活用する方針も盛り込まれた。安価に太陽光発電を実施できる土地が不足する一方、有望な適地の一つである農地の利用拡大が進んでいないとし、荒廃農地を再生利用する場合の要件緩和などにより営農型の導入を拡大する計画だ。
営農型太陽光は農地に間隔を空けてパネルを設置し、発電した電力を販売すると同時にパネルの下では農業を継続するというもので、ソーラーシェアリングとも呼ばれる。国土の狭い日本で農業と発電を両立できる取り組みとして期待されている。
橘川教授は、脱炭素に向けて「土地利用の在り方が変わってくる」と予測。これまで日本では、産業などで利用できない場所を除いた全ての土地を農業用に使ってきたが、今後は「基本はソーラーのために使うというぐらいに基本価値を変える」ことになると語った。
今後、日本が営農型太陽光を推進していく際に課題となるのが農業と太陽光発電の両立だと、早稲田大学大学院環境・エネルギー研究科の野津喬准教授は指摘する。優良農地は原則、転用が許可されない中で「消去法として営農型太陽光をやっている事例が少なくない」という。