日本中を太陽光パネルが埋め尽くす未来の現実味 脱炭素達成に向けた厳しい道のり

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そうした事例では神棚に飾るサカキなど別の作物に切り替えられることが多いとし、「仮に全ての農業従事者が営農型太陽光を導入して栽培品目をサカキに変えたとしたら、それは望ましいことなのか」と疑問を呈した。

農業経営の安定化に

農林水産省再生可能エネルギー室の西尾利哉室長は、「政府として再エネを推進しているが、優良農地を野放図につぶしていいとは誰も思っていない」と話す。営農型太陽光では、売電による副収入で農業経営がより安定する点は評価できる半面、そうした事業展開をするかどうかは個々の経営者の判断次第との見解を示した。

営農型太陽光が大規模に展開されれば、地域の景観が大きく変わる。千葉大学大学院社会科学研究院の倉阪秀史教授(環境政策論)は、地元住民から「抵抗感が示されることも十分考えられる」と予想する。

そのため、農家による主体的な運営や地域活性化につながるプロジェクトなどが必要になるとみている。「利益のために都会の業者がパネルを置きにくるだけでは理解は得られない」と強調した。

太陽光発電を巡っては、景観への影響や土砂災害への懸念から特に大規模太陽光発電所(メガソーラー)への反対運動が各地で起こっている。また、地方自治研究機構によると、4月1日時点で太陽光発電設備などの設置を規制する条例が146市町村で設けられ、都道府県でも兵庫や和歌山、岡山県で制定されている。

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著者:稲島剛史

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