「シェアレストラン」は飲食店の救世主となるか バーを間借り「バインミー専門店」として営業

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シェアレストランはホームページから登録することで利用できる。現在の業績は登録店舗約630件、開業件数約260件、間借り希望者が約1470件となっている。登録店舗が少ないのは、店舗オーナーは保守的な傾向が強く、自ら登録してくれることはあまり期待できないため。飲食店オーナーの人脈を辿って1件1件営業しているそうだ。

コロナ禍で店舗のスペース活用の必要性、テイクアウトやデリバリーの増加など、シェアレストランの需要は高まっている。

独立までの期間はほぼ1年程度

実際にシェアレストランを利用して、独立できた店はこれまでで20軒ほど。独立までの期間はほぼ1年程度だそうだ。成功している店に共通しているのは、第一に、SNSでの情報発信をこまめに行っていること。また、商品を絞り込み「その店にしかない」特徴を持たせることだという。

「移転をすれば馴染み客が離れてしまう。でもSNSでつかんだお客様は移転しても来てくれます。また間借りでは厨房や冷蔵庫のスペースも限られているし、たくさんのメニューは提供できません。1種類でもいいから、特徴のあるメニューにすることが大切です」(武重氏)

木曜日にはスパイス食堂Blue Leafがオープン。体によい食材と、店主自身が調合したスパイスを使って調理されているという。写真はチキン、ダル(豆)、花山椒のキーマカレーが味わえる3種の合いがけカレー1000円(写真:シェアレストラン)

ユニークな例としては、「究極のブロッコリー&鶏むね肉」が挙げられる。運営者はブランドとノウハウを提供し、実際の営業はフランチャイズ店が行うという事業形態で、直営店2店舗から始まり4年目の現在、100店舗まで広がっているそうだ。

「芸能人オーナーの店舗にも向いています。YouTuberや地下アイドルの店などもありますよ。自分の好きなタレントに会えるわけですから、ファンが遠くからでも来てくれます」(武重氏)

苦境を救う一時的な策として、店舗スペースのシェアという形態は有効に思われる。そしてコロナによる損害が協力金などでまかなえる規模の店舗については、アフターコロナに向けて力を蓄えるのに役立っているようだ。

シェアレストランを利用し、飲食業界に新しい息吹を吹き込む斬新なサービスが生まれてきそうな期待もある。

しかし他方、協力金の支払いの遅れなどもあり、将来どころか目前の対策を考える余裕もないほど疲弊している飲食店の実態もある。2020年度の飲食店倒産件数は過去最多の780件(帝国データバンク調べ)。飲食業界はアフターコロナまでにもう一度、ひときわ厳しい現実に直面することになりそうだ。

圓岡 志麻 フリーライター

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まるおか しま / Shima Maruoka

1996年東京都立大学人文学部史学科を卒業。トラック・物流業界誌出版社での記者5年を経てフリーに。得意分野は健康・美容、人物、企業取材など。最近では食関連の仕事が増える一方、世の多くの女性と共通の課題に立ち向かっては挫折する日々。contact:linkedin Shima Maruoka

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