東京女子医大「医師待遇の不利益変更」に募る疑念 「時代の流れに逆行」厚労省検討会の構成員も指摘

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

一方、今年2月に大学側は説明会を開いて、「臨床医師研究日休暇」を3月末で廃止、すべての医師は付属病院で「週39時間」の労働義務を負うと通告した。これで、長年続いてきた「研究日」(2019年からは「臨床医師研究日休暇」)は、完全に廃止となる。大学側のこうした姿勢に反発して、多くの医師が東京女子医大を去る決断をした。

「私も含めて、医師たちは油断していました。年中無休プランが撤回されたので、研究日の廃止も結局は立ち消えになるだろう、と思ってしまったのです」(前出の中堅医師)

「研究日」が廃止されると、収入を維持したい医師は7時間多く付属病院で働き、「週39時間」勤務で外勤を継続しなければならない。

「週32時間」勤務のまま外勤を続ける選択もできるが、「給与は相応になる」と大学側は説明した。

「相応」とはどの程度なのか? 医師らの質問に対して、大学側は「本給が2割下がる」と口頭で答えたという。そこで複数の医師がメールなどで、文書による明示を求めたところ、明確な返答がなかった。

東京女子医大の広報室は取材に対して、「意図的に回答しなかったのではなく、返信漏れなどの不手際があったのでは」と述べている。

大学側は「不利益変更であっても合理的」

労働時間の増加や賃金の減額など、労働者にとって明らかにマイナスとなる就業規則の変更を「不利益変更」という。労働契約法の第9条では、労働者と合意なく「不利益変更」することは禁止されているが、例外規定もある。

今年4月20日、東京女子医大の各診療科から代表を集めて説明会が行われた。入手した録音データには、経営側の労務担当弁護士が、「不利益変更」について言及する場面が記録されていた。

ある診療科の医師
「研究日の慣例を変えるのは、やはり私たちの感覚からすると労働条件の不利益変更だと思います。詳しく説明してほしい」
労務担当弁護士
「おっしゃる通り、労働条件の不利益変更です。ただし、労働契約法10条に〝変更の合理性〟があればOKだという規定がある。
ほかの医療従事者(筆者注:看護師、検査技師など)に研究日はないので、公平性、公正性という観点から変更の必要性はある。
変更内容の相当性としては、2年間の猶予措置があって、その間は二重に(筆者注:外勤先と東京女子医大から)報酬を取得できる状態が続いていた。そういった緩和措置もあり、変更の合理性はあると判断しています」
次ページ大学側労務担当弁護士の見解は?
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事