東京女子医大「医師待遇の不利益変更」に募る疑念 「時代の流れに逆行」厚労省検討会の構成員も指摘

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東京地方医療労働組合連合会の調査によると、35歳医師の賃金は、東京女子医大:30万円、杏林大:34.2万円、東京医大:35.6万円。東京女子医大は私立の大学病院のなかで最低ランクだった。一般病院も合わせた賃金の平均は約50万円、最大で61万円の一般病院もある。

私立の大学病院の大半は、一般病院よりも大幅に基本給が低いので、東京女子医大はさまざまな病院の中で最も低い水準だといえる。

私立大学の付属病院ではこうした給与格差を埋めるため、週1回程度、ほかの病院で「外勤」と呼ばれるアルバイトが認められている。

東京女子医大でも、週1回の「研究日」に外勤することが、長年の慣行となっていた。付属病院での所定労働時間は「週39時間」。ただし、研究日の7時間は外勤でほかの病院で働くので、実際は「週32時間」勤務だった。これに残業や当直などが加わってくる。

研究日の廃止と年中無休プラン

2019年1月、東京女子医大は、勤務する医師に対して説明会を開催した。そこで国が進める「医師の働き方改革」を受けて労務管理を見直すとして、「研究日」の廃止を医師に通告したのである。そして、「研究日」に代えて、2019年4月から「臨床医師研究日休暇」を新たに就業規則に加え、2021年3月末までの2年間は無給を猶予するとした。

大学側によると、これまで毎週7時間の「研究日」は労働時間として給与に反映されていたが、「臨床医師研究日休暇」では無給扱い、すなわち給与の対象外となる。本来ならば、毎週7時間分が減給されるはずだが、「経過措置」として2年間は猶予することにしたという。医師にとって2年間は現状維持となる。

実はこの制度変更よりも、医師たちの関心を集めたのは、同時期に大学側から示された「365日年中無休プラン」構想だったという。もし、実現すると医師の労働環境が激変する可能性が高いからだ。

東京女子医大の中堅医師は、医療収入を増加させる方法として唐突に打ち出された計画だったと話す。

「病院の収益を上げるために、『他の病院と同じことをやっていてはダメ』『休んでいる時に働けば利益が上がる』と、岩本絹子理事長(当時は副理事長)が言い出しました。これに賛同した田邉一成病院長が提示したのが、〝土日の診療=年中無休プラン〟です。もし、土日も診療することになると、私たちの働く時間がより長くなるのは確実です。だから研究日の廃止も、年中無休プランのためだろうと噂されました」

「年中無休プラン」は、医師や看護師など職員の猛反対を受けて、あえなく撤回された。

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