東京女子医大「医師待遇の不利益変更」に募る疑念 「時代の流れに逆行」厚労省検討会の構成員も指摘

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大学側の労務担当弁護士は、「研究日」の廃止は不利益変更だと明確に認めた一方で、変更の合理性があるので、手続きに問題はないという認識を示した。

「医師の働き方改革検討会」のメンバー、早稲田大学の島田陽一教授(撮影:福寺美樹)

医師の働き方改革に逆行している

早稲田大学の島田陽一教授に、東京女子医大の労務担当弁護士による不利益変更であっても合理性がある、という主張について見解を尋ねた。

「今回のケースが、不利益変更であることは間違いありません。労働契約法の第9条と10条で、合理性があれば不利益変更でも従わなければならない、というルールがある。裁判官が合理性をどのように判断するかというと、労働者である医師の受ける不利益の程度と、変更の必要性のバランス。そして変更内容が相当であるかなど、総合的に判断します」

以下、Q&A方式でポイントを紹介する。

Q:「研究日」が医師だけに認められている状態は、看護師や検査技師などとの公平性を欠くので変更(廃止)する必要性がある、という主張については?

A:「公平性が決定的な理由には、ならないと思います。医師は、看護職や技術職と仕事の内容が違いますので、職種別の対応があるのが自然です。不公平感と考える人がいても、それだけで労働条件を変えられる根拠ではない」

Q:では「研究日」の外勤という慣行は、変更せずに継続すべき?

A:「いえ、そうでありません。一般企業でも、兼業を認めるようになってきましたが、それは勤務時間外です。外勤も兼業の一つと考えると、東京女子医大が勤務時間と外勤を分けて整理したい、というのは理解できます」

Q:「研究日」を廃止した東京女子医大の判断は正しい?

A:「労働時間が増えるとか、研究日の廃止に応じて給与を減らすのは適切とは思えない。日本の社会は段階的に労働時間を減らしてきましたが、企業はそれに応じて賃金を減らしたわけではないからです。

慣行として研究日の外勤を認めてきた前提になると、従来の基本給は研究日を除いた、週32時間でしょう。そのうえで外勤を認めるという対応もあると考えます」

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