東京女子医大「医師待遇の不利益変更」に募る疑念 「時代の流れに逆行」厚労省検討会の構成員も指摘

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経営が厳しいという理由で人件費を抑制する一方で、次々と大型施設の建て替えを続けている方針に、疑問を抱く医師は少なくない。

医師の働き方改革が法制化され、大学病院の医師にも新しい労働スタイルが必要になっている。だが、東京女子医大の「研究日」の廃止は、労働時間の増加や収入の大幅な減少の可能性があるなど、かえって医師の負担を増加させる要素が大きい。

こうした疑問を東京女子医大に尋ねたところ、広報室は次のように回答した。

「今回の改正は、一面から見れば 7 時間の労働時間の増加と見えますが、他方から見れば週 39 時間と計上されていた労働時間が週 32 時間という実態を反映した労働時間数となり、院内での年間 360 時間余りの『時短』が実現した形になったことも事実です。(中略)ただし、そうは言っても個々の医師にとっての実感は、週 7 時間の所定労働時間の増加であることは事実です。そのため、この 2 年間の猶予措置を講じてきました』

新制度への移行は「留保」状態

今年4月以降、東京女子医大の医師は、「週39時間」と「週32時間」のどちらかの労働時間を選択することになった。しかし、現時点(6/25現在)で基本給は、どちらも以前と同じだという。複数の関係者によると、新制度への移行は「留保」されているというのだ。

批判を受けての措置なのか、それとも準備不足なのか。整合性を欠いた対応に、勤務する医師の間に新たな不信感が募っている。

そもそも「研究日」に外勤をしなければならないほど、医師の給与が低いことが根本的な原因だが、大学側に改革する動きは何も見えていない。

優れた医師が集結して、高度な医療を提供してきた東京女子医大。その伝統が、これからも維持できるのか、危ぶまれている。

岩澤 倫彦 ジャーナリスト

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いわさわ みちひこ / Michihiko Iwasawa

1966年、北海道・札幌生まれ。ジャーナリスト、ドキュメンタリー作家。報道番組ディレクターとして救急医療、脳死臓器移植などのテーマに携わり、「血液製剤のC型肝炎ウィルス混入」スクープで、新聞協会賞、米・ピーボディ賞。2016年、関西テレビ「ザ・ドキュメント 岐路に立つ胃がん検診」を監督。2020年4月、『やってはいけない、がん治療』(世界文化社)を刊行。近著に『がん「エセ医療」の罠』(文春新書)。

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