被災者支える「公営バス」から見た復興の現実 震災10年の津波被災地をたどる・宮城南部編

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この町も町営公共交通機関を持っている。ただ「新地町のりあいタクシー」は乗り合い方式と、相馬市内との間を結ぶ拠点間運行の路線バス方式の2つに分かれ、かつ利用には登録と利用券または定期券の購入が必要となっている。

JR常磐線の新地駅(筆者撮影)

乗合タクシーは予約制だ。事実上、町民専用で旅行者向けではない。震災前の2004年からこういった方式であるそうで、鉄道以外の公共交通機関の利用客がごく限られ、タクシーで事足りる状態であったのだろう。

新地駅のすぐ南側から、常磐線は新線に入るが新旧の分岐点はもう定かではない。旧線跡は盛土され、防潮堤を兼ねた県道に改築されている。

山元町営バスを乗り継ぎ

新地6時20分発に乗って隣の山元町の坂元でいったん降り、駅前を観察。この駅間で福島と宮城の県境を越えるが、その場所は、地図を見ていない限りわからない。坂元も被災して山側へ移転、高架化された駅だ。

山元町営バス「ぐるりん号」(筆者撮影)

山元町も町営の公共交通機関を持っており、やはり主に日中に運行するデマンド型(予約制)乗合タクシーと、定期運行し誰でも利用できる路線バス方式の町民バス「ぐるりん号」がある。

バス路線のうち、常磐線より海岸沿いを走るのは北部線と中部線だ。いずれも1日2〜4本程度の運転で、土地勘がない人間には、ルートも把握しづらい。町の公式サイトで公開されている時刻表や路線図を子細に検討し、坂元6時56分発で山下を通り過ぎて浜吉田まで行く。7時06分着。

山元・亘理の町営バスが乗り入れる浜吉田駅西バス停。奥に見えるのがJRの駅舎(筆者撮影)

浜吉田駅は北隣りの亘理(わたり)町にあるが、山元町営バスが乗り入れている。山元町域が駅のすぐ南側まで迫っており、日常的にこの駅を使う住民がいるからだ。「縦割り」にならず利便性優先の柔軟な路線設定は、常磐線が不通だった時分から見受けられた。

駅がすぐそこに見える浜吉田駅西バス停は、亘理町営バスと同じ場所だった。乗り継ぐ客が存在するかどうかはわからないが、バラバラに設けるよりよい。

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