日本人は迫る「デジタル通貨」の新潮流に疎すぎる 日本銀行と日本政府はいったいどうするのか

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しかしそのようなトレンドがわかると、スウェーデン政府は動きます。スマホアプリの開発に乗り出し、実際、2012年にスウェーデンの中央銀行と大手銀行数行が共同で「Swish(スウィッシュ)」というスマホアプリを開発します。

スウィッシュはBankIDという決済認証システムを使ったアプリで、利用者はアプリをインストール後、ID番号を登録します。すると自動で銀行口座とリンク。あとは買い物時にスウィッシュを使い、お店や商品の金額を入力すれば、決済が行われるという仕組みです。スウェーデンでは人口の約7割がこのスウィッシュを使い、まさにキャッシュレスな生活を送っています。

スウェーデンから見るデジタル通貨の魅力

スウェーデンを見ていて感心するのは、キャッシュレス化の動きを国が率先して行っていることです。そのため民間の飲食店などでの利用時だけでなく、公的な観光名所の入場料など、まさに街中のあらゆる場所で使えます。

当然、現金を下ろす人は皆無ですから、まさに先ほど私が紹介したトレンドのように、金融機関の窓口ならびにATMは、次々と姿を消していきました。

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脱税やマネーロンダリングといった不正行為も、現金からデジタルに移行することで、防ぐことができます。決算報告や個人の確定申告などにおいても同様です。各種お金に関する不正を防ぐことができる。これも、デジタル化の魅力です。

「世の中に出回っている現金はどうするんだ?」と異を唱える人がいますが、問題ありません。日本銀行が買い取り、デジタル通貨として還付すればいいだけです。

そもそも絶対的存在のように思える現金ですが、私たち人類の長い歴史からすれば、古い時代の貨幣などを除いては、とても短い。中央銀行が設立されて以降、わずか130年ほどの文化、ツールでしかないからです。

日本銀行ならびに政府は、渋沢栄一の紙幣のデザインはすばらしいとしても、お札を刷ることを当たり前と考えている場合ではないのです。お金はこれから先の技術でどうあれば最適な存在になれるのかを考えるべきなのです。

あくまで取引をするという目的のための手段ですからその取引自体をどのように支援するシステムが最適なのかを発想すべきなのです。その1つの手段がデジタル通貨の発行かもしれません。

山本 康正 ベンチャー投資家、京都大学経営管理大学院客員教授

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やまもと やすまさ / Yasumasa Yamamoto

東京大学で修士号取得後、NYの金融機関に就職。ハーバード大学大学院で理学修士号を取得し、グーグルに入社。フィンテックやAI(人工知能)などで日本企業のデジタル活用を推進し、テクノロジーの知見を身につける。日米のリーダー間にネットワークを構築するプログラム「US-Japan Leadership Program」諮問機関委員。京都大学経営管理大学院客員教授。日本経済新聞電子版でコラムを連載。著書に、『シリコンバレーのVCは何を見ているのか』(東洋経済新報社)、『世界最高峰の研究者たちが予測する未来』(SBクリエイティブ)、『アフターChatGPT』(PHP研究所)、『テックジャイアントと地政学』(日本経済新聞出版)など。

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