3000円のガトーショコラが売れまくる理由 4倍値上げと脱本業でブランドを築いた逆転の発想

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高価の理由は、材料にある。ケンズカフェ東京はイタリアの高級チョコレートメーカー、ドモーリ社から年間4トン分のオリジナルブレンドのクーベルチュール(製菓用チョコレート)を特別に仕入れ、高品質の国産バター「カルピス特選バター」を年間約4000個使う。小麦粉をいっさい使っていないので、妙なパサパサ感もない。

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なめらかな食感が日本人向け(撮影:今井康一)

「とろりとなめらかな食感が日本人の好みに合っている。レンジで温めたり、冷凍庫で冷やしたりと、いろいろな食べ方もできる」。チョコレートに詳しい、ショコラコーディネーターの市川歩美さんはこう評する。

市川さんいわく、「フランスの高級チョコレートブランド『ラ・メゾン・デュ・ショコラ』が1998年に東京・表参道に初出店して16年。2001年に銀座へ1号店を出したベルギーの『ピエール・マルコリーニ』、2002年に日本に初進出したフランスの『ジャン=ポール・エヴァン』などとともに、(約15年のときを経て)高級チョコレートが日本人に浸透してきている」。

発売当初の値段は現在の4分の1

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もともとは一般的なイタリアン・レストランだった

アベノミクスに伴う株高や景況感回復が手伝って、高額品の売れ行きが好調という背景もありそうだが、特撰ガトーショコラの生い立ちをひもとくと、ビジネスにおける興味深いヒントも見えてくる。価格設定の妙による儲けの仕組みとブランドの構築、そして業態転換だ。

ケンズカフェ東京はもともと1998年開業の一般的なイタリアン・レストランで、オーナーシェフの氏家健治さんはパティシエ(菓子職人)ではなくシェフ(料理人)。転機になったのは、ディナーのコース料理でデザートとして出していたガトーショコラを「持ち帰って食べたい」という顧客の要望だった。

氏家さんは当初、味や鮮度の劣化を心配して持ち帰りを拒否していたが、要望が日増しに強まったことから対応を始めた。実は持ち帰りを始めたばかりの頃、1本の値段は1300円、容量は500グラムだった。単純比較すると、現在の4分の1の価格である。

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