統合失調症は「一生苦しむ病気」と思う人の勘違い 時代を経て「コントロールできる病」に変化した

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日本人が知らない「統合失調症」の実情とは?(写真:Tero Vesalainen/iStock)

「統合失調症」とはどういう病気なのか? 名前くらいは聞いたことがあっても、具体的にどういう病気か、発症後の人生がどうなるかまで知る人は少ないはず。今回はこの病気について、できるだけわかりやすく解説してみます。

発症確率はどの地域でも「0.8%前後」

統合失調症とは、幻覚や妄想を主要な症状とした精神疾患のひとつです。発症率は0.8%。つまり約100人に1人が発症する病気で、厚労省調査では現在80万人近くの人が治療を受けていると言います。

興味深いことに、世界中のどこの国でも、先進国でも発展途上国でも、発症率は0.8%前後と報告されています。遺伝的な関連は疑われるものの、現時点ではその発症機序の仕組みまではわかっていません。

おそらくほとんどの人は、「統合失調は治らない病気」「入院したら退院できないおそろしい病気」「廃人のようになる病気」といった、極めてネガティブな印象を持っているはず。

確かに一昔前の映画などをみると、鉄格子の入った精神科病棟に「目がうつろで、ボーッとした表情で、独り言をしゃべっている人」が出てきます。これがいわゆる、精神病患者、統合失調症患者のイメージとして扱われてきました。

しかし、これは偏見にすぎません。30年前、私が精神科医になりたての頃は確かにそういう風景もありました。精神病院に入院している患者の半分以上は統合失調症であり、10年以上入院している方もたくさんいましたが、今は違います。

「非定形向精神薬」という新薬が開発され、日本でも1996年から使用されています。従来の向精神薬とは異なり、副作用が極めて少ないのがこの薬の特徴です。

かつての「精神科の強い薬」というと、眠気、手の震え、口の渇き、便秘など、強烈な副作用があり、薬を飲むだけでもたいへんな時代がありました。現在、主流になっているこの薬は、そうした副作用が極めて軽く、ザックリ言えば5分の1程度に軽減されています。

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