純投資の減少と経常黒字の増大
以下では、(2)式の両辺がどのように変化したかを見よう。まず、日本経済を全体として見ることとする(セクターごとの変化は、後で見る)。2007年度を1996年度と比較すると、変化額は次のとおりだ(単位は兆円、下図を参照)。
(左辺) 貯蓄 ▲26
統計上の不突合 7
(右辺) 純投資 ▲38
経常黒字 17
つまり、貯蓄は減ったのだが、それ以上に純投資が減ったのである。このような変化が、純輸出の拡大と対応しているわけだ。
純投資を分解してみると、投資は▲25で、固定資本減耗は13だ。したがって、投資の減と貯蓄の減はほぼ見合っている。しかし、固定資本減耗があるので、純投資の減は貯蓄減より大きくなったのだ。
家計にたとえて言えば、次のようなことだ。
日本君の家計は、店や家の改築などの投資を行っているが、これまでも貯蓄(毎年の収入から家計費を引いた残り)は投資を上回っていた。そこで、余ったカネは、アメリカ君に貸していた。最近では売り上げ増が見込めないので、店を改築しなくなってしまった。また、家族はもう増えないので、家を増築する必要もなくなった。こうして投資が減少した。貯蓄も減ってはいたのだが、差し引きでカネ余りが進んでしまい、アメリカ君への貸し付けが増えたのだ。