社長が「会社売却」を真剣に考える、よくある5理由 その「一世一代の決断」は「会社」を救えるか?

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2つめの理由は「創業者利益の獲得」です。

【売却理由②】「創業者利益の獲得」のため

30代から50代のまだ働き盛りの経営者が「いったん会社を売却して、それで得た資金で別のことをしたい」または「アーリーリタイアしたい」ケースです。

実際には、日本ではアーリーリタイアを望む人はまだまだ少なく、次にやりたいことが決まっているかどうかは別として、「資金を得て別のことにお金を使いたい」という動機がほとんどです。

次のことが決まっていない場合は、売却したあとに今度は買い手に転じてM&Aによる買収を検討する、ということもよくあります。

「事業の立ち上げは好きでやりがいを感じるが、いったん出来上がったビジネスを管理することにはあまり面白みを感じないため、一度売却してまた新たな事業をしたい」という経営者が、「創業者利益の獲得」を志向します

欧米では会社を売却できることは「成功者の証」

多くのベンチャー企業の社長がIPO(新規株式公開)をひとつの目標として目指したとしても、実際に国内でIPOができるのは年間100社程度と狭き門です。

M&Aによる売却によって創業者利益を得ることは、ベンチャーの本場であるアメリカでは当たり前のこととして受け止められています。

ベンチャーキャピタルが投資したアメリカ企業において、エグジットの際のIPOとM&Aによる売却の割合は、1対9でM&Aによる売却がほとんどです。アメリカでは、「はじめから大手企業への売却を目指して創業する」こともよくあります。

日本では売却を目指してベンチャー企業を立ち上げるということは、まだ一般的ではありませんが、IPOが現実的には非常に狭き門であるなか、売却が創業者利益を得ることの最も現実的な手段になってきています。

自分の会社を売却して新たなビジネスを始めるなど、何度も新しいビジネスを手掛ける起業家は、欧米では「シリアルアントレプレナー(連続起業家)」と呼ばれていますが、日本でもシリアルアントレプレナーは徐々に増えてきています。

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