社長が「会社売却」を真剣に考える、よくある5理由 その「一世一代の決断」は「会社」を救えるか?

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最後は、オーナー社長が純粋に会社の発展や従業員の将来を考えたときに、自分が経営を続けるよりも、「よりよい環境、よりよい経営者のもとで会社および社員の成長を目指すべきであると考え、売却に至る」ケースです。

【売却理由⑤】「会社の発展」と「社員の将来」を考えて

資本力があり、大企業の顧客基盤をもつグループに入ることで、より大きな仕事をすることを望んで、経営権を譲渡してグループ入りすることもあります。

また、個人商店から従業員が徐々に増えてきて、「企業」に脱皮する過程において、自分の手には負えないと感じて、「しっかりとした会社に経営を任せたい」といって譲渡を望む経営者もいます。

これは後継者がいない、お金がほしい、また業績の不安があるというのが売却の主因ではありません。先代社長から経営を引き継いだ2代目(以降)の社長がこのような判断をする傾向があります。

この場合、いつまでに売却しなければならないということはないので、必ずしも売却ありきではなく、あくまでいい相手先があれば、売却、経営統合を検討するということもあります。

「最後までわからない」のがM&Aの世界

中小企業のオーナー社長が会社を売却する理由は本記事で紹介した5つに大別されますが、売却理由は完全にどれかひとつに分類できないことも多くあり、2~3の理由が合わさっていることもよくあります。

売却にはさまざまな理由がありますが、売り手にとって自らの会社を売却するということは「一生に一度あるかないかのこと」であり、よくよく考えたうえでの決断です。しかし、売り手と買い手が出会い、相思相愛になったとしても、売り手は「感情的な問題」で、売却をとりやめることがあり、「最後までどうなるかわからないのがM&Aの世界」です。

したがって、M&Aを進めていく中で、買い手としては、売り手のオーナー社長の感情に配慮した交渉や対応(断るときでも)が求められるのが、M&Aの世界なのです。

藤井 一郎 インテグループ代表取締役社長

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ふじい いちろう / ichiro Fujii

1997年に早稲田大学政治経済学部を卒業後、三菱商事に入社。その後、米国サンダーバード国際経営大学院にてMBAを取得。2007年にM&A仲介・アドバイザリーのインテグループ株式会社を設立し、代表取締役社長(現任)に就任。中堅中小オーナー企業、上場企業、バイアウトファンドなどを顧客に、これまで100件以上のM&A成約に関与。2016年を最後に自ら案件を担当することをやめ、その後は、M&Aコンサルタントの採用・育成、コンサルタントに対する助言および経営業務に専念している。著書に、ビジネス交渉の分野でのベストセラー『プロフェッショナル・ネゴシエーターの頭の中―― 「決まる! 」7つの交渉術』がある。

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