ジョージア「郷土料理」が日本で広がり続けるナゾ 日本人引きつける煮込み「シュクメルリ」の魅力

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インターネット時代ならではのツイッター発信もさることながら、フットワーク軽く自国の文化を売り込んできた成果の1つが、シュクメルリブームだったのだ。

日本では、とくにこの半世紀余り、世界各国の料理が次々と外食で食べられるようになり、家庭料理としてもレシピが紹介されたり、加工食品が発売されるなどして定着してきた。とくにここ数年は、韓国料理のスンドゥブチゲ、タイ料理のガパオなど、新たに定着する家庭料理も多い。

日本人ならではの高度なアレンジ力

日本人好みにするアレンジ力もすごい。カレーはすっかり国民食で、最近は独自に発達したスパイスカレーも人気になっている。中国由来のラーメンも、世界では日本食として人気になっている。だからシュクメルリも、抵抗感なく受け入れられ、鍋にする、ご飯にかける、麺にするなどのアレンジがすぐさま行われているのだろう。どれも日本人が好きな食べ方である。そしてこの料理に使われるホワイトソースは、戦前から人気の洋食由来の味だ。

ニンニクの強烈な味も、近年、強炭酸、麻辣味など、強い味、辛い味の人気が高まっていることから、今とくに喜ばれるものといえるだろう。

今後のジョージア料理の展開に期待を抱くレジャバ氏(撮影:ヒダキトモコ)

ジョージアはここ数年、『世界ふしぎ発見!』など、テレビ番組でもよく紹介されるようになり、次第に認知度が上がっていた。今後、さらにジョージアの食が知られ、人気になる可能性はある。

今はコロナ禍で海外旅行もできなくなっているが、コロナ以前は世界各地との交流が増え、今まであまり知られていなかった国を知りたい、という人々の欲求も高まっていた。未知の国だからこそ知りたい、と飽くなき好奇心がジョージアへも向かっている。

次は、ハルチョーなのか、はたまた別の料理なのか。意外と日本では活用されていないクルミのアレンジ術なのか。しばらくジョージア料理の展開を見守ってみたい。

阿古 真理 作家・生活史研究家

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あこ まり / Mari Aco

1968年兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部卒業。女性の生き方や家族、食、暮らしをテーマに、ルポを執筆。著書に『『平成・令和 食ブーム総ざらい』(集英社インターナショナル)』『日本外食全史』(亜紀書房)『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた』(幻冬舎)など。

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