先生の「発達障害じゃない?」に僕が救われたワケ 「板書と漢字が苦手」は努力不足だと思ってきた

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3つ目の学校は、聴覚障害者へ通訳をする「パソコン要約筆記」という資格を取るために通った。ここでは資格取得のため1年間みっちり授業を受けたのだが、さいわいパソコン作業が主だった。手書きだったら挫折していたかもしれないが、ノートもパソコンで取ればいいので、板書にもつまずかなかった。

講師に呼ばれ

しかし、授業も順調に進み、資格取得試験を目前に控えたある日のこと。僕は講師に呼ばれ、「もしかして、あなた発達障害じゃない?」と聞かれた。理由は、僕が提出した課題が自分の名前と住所以外ぜんぶ、ひらがなだったからだ。「資格の試験は筆記試験だから、漢字も書けないと合格できない。でも診断書があれば免除になるかも」と、講師はアドバイスをくれた。

僕は、さっそく近所の心療内科を受診した。結果的に僕は発達障害とは診断されなかった。しかし試験に支障があるということ、発達障害のなかの学習障害の傾向があるということで診断書をもらうことができた。そして、診断書のおかげで、ひらがなで答えを記入しても試験を無事に合格することができた。診断書がなければ100%落ちていたと思う。

講師に「発達障害じゃない?」と言われたときは驚いた。「まさか自分が?」と思ったし、何より漢字が書けないのは勉強ができない自分のせいだと思っていたからだ。読むことはできても、書こうとすると細部が思い出せない。スマホで調べて何度も確認しながらじゃないと漢字が書けない。これらはみんな、僕の努力不足だと思っていた。

結局、僕が発達障害なのかどうか、今もよくわからない。ただノートの書き取りが苦手でも、パソコン入力なら問題なくできたし、診断書をもらって資格の筆記試験も合格できた。自分の不得意を得意でカバーする手段は意外とあるのかもしれない。「なんとかなるものだし、これからもなんとかなるのだろうな」と僕は、今思っている。(不登校経験者・鬼頭信さん・33歳)

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