就職サイトの歴史を振り返ってみよう。草創期から発展期にかけて多くの動きがあったが、繁雑なのでリクナビとマイナビを中心に書くことにする。
日本でインターネットを一般の人も利用するようになったのは1995年以降のことだ。その頃に新卒向け就職ガイド誌を発刊していたのは、新聞社を除けばリクルートを筆頭に10社もなかった。毎日コミュニケーションズ(現在のマイナビ)もその1つだったが、リクルートとの差は圧倒的だった。
両社ともに1995~1996年に就職サイトを立ち上げたが、利用する学生はそんなに多くなかった。大学の研究室はインターネットとつながっていたが、就職課(キャリアセンターという名称はなかった)にもインターネットに接続したPCは置かれていなかったし、個人がPCでネット接続することは面倒だった。1980代後半から、主に文字情報のやりとりにパソコン通信がすでに利用されていたものの、利用者は限られていた。
2000年前後に状況は変わる。ブロードバンドと呼ばれる接続環境が普及した。接続環境の改善とともに、徐々に就職サイトが就職ガイド誌にとって代わって、新卒メディアの基幹サービスになる。
その最大サイトがリクナビ、2位がマイナビだった。他にも新卒向け就職サイトはあったが、この2つのサイトとの差はかなり大きかった。また当時は「リクナビ、マイナビ」と呼び、巨大なリクナビが最初にあり、次にマイナビというイメージがあった。
就職サイトの功罪
2010年代に入ると社会におけるネットの重要性はさらに高まっていく。
2010年頃はスマートフォンが普及し始めた時期であり、2011年の東日本大震災を契機にSNSの利用も広がった。大学の就職ガイダンスでも就職サイトの利用を推奨し、まず登録するべき就職サイトとしてリクナビとマイナビが推奨されていた。しかし、この頃でもリクナビが上位サイトとして認識されていたと思う。
また、この頃より就職サイトによる問題が顕在化していった。学生はリクナビやマイナビという巨大メディアが提供する情報に食いつき、多くの学生のプレエントリー数は80~100社に上った。「就活は情報戦」と学生を指導することがあるが、この頃の学生は就職サイトの画一的な情報によって踊らされていたのだ。
ところが、現在のプレエントリー数は20~30社程度へと絞り込まれている。たぶんその背景に学生の企業研究が進んだことがある。2010年のころの学生は焦って就職サイトを閲覧し、とりあえず、急いで、どこにでもエントリーしていた。現在の学生は、インターンシップ以前から企業研究を始め、インターンシップで実体験を積み、口コミ情報やエントリーシートの模範例を読んで就職活動をしている。
大学受験と似ているかもしれない。どの大学に進学するか、そのために補強すべき科目は進学担当の先生が指導してくれるし、これまでの問題集も大学別に刊行され、傾向と対策を講じることができる。就活でも先輩の成功例、失敗例を読み、自分なりの戦略を立て、戦術を実行できる。そういう情報を提供する就職サイトがこの数年に存在感を増している。
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