6月11日、中国のネット配車サービス最大手の滴滴出行(ディディ)は、アメリカ証券取引委員会(SEC)にIPO(新規株式公開)の目論見書を提出した。同社は2012年に設立され、これまでに300億ドル(約3兆2846億円)を超える資金調達を行った。だが、IPOに至るまでの道のりには紆余曲折があった。
ディディは目論見書のなかで、各事業が直面しているリスクを60ページにわたって説明した。とくにコンプライアンスに対するリスクは、ディディの今後の事業に大きな悪影響を及ぼす可能性がある。具体的には、運転手の資質や帰属をめぐる問題、(都市ごとのルールに沿った)運転手や車両の営業許可の問題、独占禁止法関連の規制強化や違反とされた場合の罰金のリスクなどである。このほか、事業の黒字化を実現できない可能性についても記載している。
ソフトバンクグループは取締役会から退任
注目に値するのは、ディディの筆頭株主であるソフトバンクグループの松井健太郎氏が取締役会を退任することが目論見書に明記されていることだ。 ソフトバンクグループは2015年から2018年にかけて、ディディに約108億ドル(約1兆1825億円)を出資し、IPO前の時点での持株比率は21.5%に上る。このほか、投資ファンドの博裕資本(ボーユー・キャピタル)の陳峙屹氏も取締役会を退任する。
ソフトバンクと博裕資本の退任後のディディの取締役会は、創業者で会長兼CEOの程維氏、総裁(社長に相当)の柳青氏、副総裁(副社長に相当)の朱景士氏という3人の経営陣に加え、騰訊控股(テンセント)総裁の劉熾平氏、アップルの副社長のエイドリアン・ペリカ氏、阿里巴巴集団(アリババ)会長の張勇氏の合計6人がメンバーとなる。
ディディはIPO前に度重なる資金調達を行った。その結果、株主は機関投資家だけで100社近くに達する。さらには、会社の支配構造も複雑だ。ディディは1株当たりの議決権に差をつけた種類株を発行し、経営陣により多くの議決権を割り当てることで、会社の支配権を維持している状況だ。上場後も経営陣の議決権は50%超を確保する。
(財新記者:銭童)
※原文の配信は6月11日
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