大手IT企業に対する規制や監督を中国政府が強化するなか、ネット配車サービス大手の滴滴出行(ディディ、漢字の略称は「滴滴」)が最近実施した価格変更が物議を醸している。
中国交通運輸省を中心に省庁横断で組織されたネット配車事業の監督当局は3月5日、滴滴の責任者を召喚して行政指導を行ったと明らかにした。その席で当局側は、滴滴が一部の都市で行った価格変更は準備が不十分であり、(ドライバーや顧客との)事前コミュニケーションや影響評価が足りず、ドライバーの合法的権利を侵害した可能性があると指摘した。
滴滴は3月に入って、四川省成都市など中国国内の複数の都市でドライバーおよび乗客に向けた価格体系を変更。乗客が支払う運賃を引き上げると同時に、ドライバーが受け取る報酬を引き下げ、滴滴がより多くの配車手数料を得られるようにした。
ところが、この変更はドライバーの間で強烈な不満を引き起こした。その結果、滴滴の配車オーダーを引き受けないドライバーが続出し、タクシーを呼びたい市民が滴滴のアプリを操作してもなかなかつかまらない事態が生じてしまった。
なお、財新記者は滴滴が各地で実施した価格調整や配車手数料の引き上げ率について同社に事実確認を求めたが、回答は得られていない。
配車手数料を合理的な水準に
今回の行政指導で当局側は、滴滴が問題を直視して即時改善を図ること、ドライバーおよび乗客の合法的権益を保障すること、独占的地位を利用した不利益の押しつけを厳に慎むことなどを指示した。さらに、同社が企業の社会的責任をしっかり認識し、配車手数料の比率を合理的な水準に定め、ドライバーの適正な収入および健康維持を保障するよう求めた。
これに対して滴滴側は、「経営の過程で生じたこれらの問題を深く反省し、監督当局の指導の順守を徹底する。企業の主体的責任を全うし、ドライバーと消費者の合法的権利を守り、ネット配車タクシーの安全運行と業界の安定を確保していく」と表明した。
滴滴は2020年の中頃からIPO(新規株式公開)の準備を開始したものの、新型コロナウイルス流行の影響が長引き、ネット配車事業はまだ完全回復には至っていない。
加えて当局の監督が強まるなか、同社は貨物輸送サービスや「社区団購」と呼ばれる地域コミュニティ向けの共同購買型ネット通販サービスなど、新規事業の開拓と成長に注力する方針だ。
(財新記者:銭童、楊雪)
※原文の配信は3月5日
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