東芝公表の「調査報告書」は結局、何が争点なのか 6月25日に開かれる定時株主総会は大荒れ必至
具体的な対応としては、2021年6月25日開催予定の株主総会における役員候補者を変更しました。
東芝は5月14日時点で、すでに取締役13名の選任案を決定し、公表していましたが、調査報告書を受け、社外取締役候補者のうち太田順司氏、山内卓氏を再任せず、6月25日をもって任期満了で退任することとしました。
現在、太田順司氏は監査委員会委員長兼指名委員会委員、山内卓氏は監査委員会委員兼指名委員会委員であり、東芝の社内調査では不正を発見できなかった(あるいは公表できなかった)ことの責任を取った格好です。これにより取締役候補者は13名から11名に減りました。
また執行役選任予定者であった豊原正恭副社長、加茂正治上席常務も再任せず、6月25日をもって任期満了で退任することとしました。新たに、福山寛上席常務、谷尚史常務を執行役選任(再任)予定者としました。
上場会社が事前に公表していた役員候補者を直前になって変更するのは異例です。東芝は、従前の「不正はなかった」という立場を一転させ、調査報告書で名前が挙がっていた役職者の退任を早々に決定しました。アクティビストを含む株主に対して一定の回答を示したといえます。
もっとも、これで十分かというとそうではなさそうです。
取締役の再任に株主の理解が得られるか
アメリカの議決権行使助言会社インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)とグラスルイスは、太田氏、山内氏だけでなく、取締役会議長の永山治氏、取締役の小林伸行氏、ワイズマン廣田綾子氏についても再任に反対することを推奨する声明を出しました。いずれも現在の監査委員会委員あるいは取締役候補者を選定する指名委員会委員です。
東芝は海外投資家比率が高く、特にISSは海外の機関投資家に対して強い影響力を持つと言われています。東芝が、現在の監査委員会委員あるいは指名委員会委員のうち一部についてはなお再任する方針としたことについて、株主の理解が得られるかどうかが注目されます。
6月14日、永山氏はオンラインで記者会見をしました。東芝において改善すべき点があることを認めつつ、2021年4月14日に辞任した前社長兼CEOの車谷暢昭氏の責任は決して無視できないものがあると述べました。
「法的責任はさておき」という留保はつけていましたが、今後の調査次第では、東芝として車谷氏の責任を追及する、あるいは現経営陣が株主から責任追及された場合には車谷氏を巻き込むという可能性もあるでしょう。
永山氏自身の進退については、「私としては今果たさなければいけないことに集中したい。実際の進退については6月25日の株主総会で問われる」と述べました。
このように、調査報告書の公表から日が経たないうちに目まぐるしく動きがあり、インパクトの大きさを物語っています。6月25日の総会直前に公表されたことも相まって、株主がどう判断するのか注目されます。
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