東芝公表の「調査報告書」は結局、何が争点なのか 6月25日に開かれる定時株主総会は大荒れ必至

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また株式会社が現在の役員などに対して責任追及をすることは期待しがたいことから、株主が株式会社に対し、役員などの責任を追及する訴えを起こすことを請求できる規定が定められています。

この請求があった日から60日以内に会社が責任追及の訴えを起こさないときには株主自ら責任追及の訴えを起こすこと(株主代表訴訟)も認められています(会社法847条)。

加えて、役員などが職務を行うについて悪意または重大な過失があったときは、第三者に生じた損害を賠償する責任を負うという条文もあります(会社法429条)。

今回の調査報告書で問題となった株主の権利行使は、特定の株主の議決権行使が不公正に妨げられたというものですから、権利行使を妨げられた株主が「第三者」として役員などに対して損害賠償請求をすることは十分考えられるところです。

この場合には、議決権行使が妨げられた株主に生じた損害をいくらと計算して、それをどのように証明するか、という問題が残ります。

以上の会社法上の問題とは別に、東芝は上場会社ですから、コーポレートガバナンス・コードとの関係も検討が必要です。

順守しない場合にはその理由の説明が必要

コーポレートガバナンス・コードとは東京証券取引所が定める上場会社の行動原則です。法的な拘束力や罰則規定はありませんが、「コンプライ・オア・エクスプレイン」の考え方に基づき、企業に対して自主的な順守(コンプライ)を求めており、順守しない場合にはその理由の説明(エクスプレイン)を求めています。説明の内容や程度についても明確な基準はなく、最終的には株主などの判断に委ねられているものです。

コーポレートガバナンス・コード補充原則1-1③では、「上場会社は、株主の権利の重要性を踏まえ、その権利行使を事実上妨げることのないよう配慮すべきである」と定められています。

東芝としては、調査報告書が認定した事実をもってしても、コーポレートガバナンス・コードを順守(コンプライ)したという立場を取るのか、あるいは順守していないのであれば、その理由を株主などが納得できる形で説明(エクスプレイン)することが求められます。

調査報告書公表から現在までの動きを追ってみましょう。

東芝は6月10日に調査報告書を公表する際、対応については慎重に検討のうえ、後日開示するとしていました。そして6月13日、東芝は正式に「調査報告書を受けた当社の対応等について」を公表しました。

東芝は、「株主総会が公正に運営されたものとは言えないというご指摘については真摯に受け止めております」としたうえで、外部の第三者の参画も得て、すみやかに客観的、透明性のある徹底した真因・真相の究明を行い、責任の所在を明確化することを宣言しました。

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