中京銀行、異例の「希望退職」で強まる再編気運 人員削減に加えて店舗数の約3割を一気に削減へ

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メガバンクにはリーマンショック以降、健全性を維持する観点から、一定の自己資本比率を維持する厳しい国際規制が課されている。規制対応のためにリスク資産を圧縮する動きが進んでおり、保有する地銀の株式も圧縮の対象となっている。三菱UFJは過去に愛知銀行や百五銀行(三重県)の株を手放してきた。

業界内では、同様の理由から中京銀行の株も売却されるのではないかとみられている。今回の構造改革は単純な経費削減ではなく、「再編に向けた準備」とみる関係者は少なくない。

中京銀行自身も再編には前向きな姿勢を見せてきた。今年3月まで頭取を務めた永井涼氏(現、特別顧問)は頭取時代、「この時代に再編を考えていない頭取はいないのではないか」と語っている。中京銀行はその考え方は変わっていないとし、「中計は単独でやっていく前提で作ったものだが、再編に対する考え方を否定するものではない」(総合企画部)という。

統合の候補は?

周辺の地銀にとっても中京銀行は魅力的だろう。地盤である愛知県は、トヨタ自動車をはじめとして企業が多く、資金需要が見込まれる。中京銀行は愛知銀行、名古屋銀行に次ぐ3番手だが、愛知県内に70近くの支店を持ち、そのうち40近くが名古屋市にある。愛知県は周辺の地銀が貸し出しを増やそうと積極的に進出しており、「中京銀行の持つ支店網は魅力的」(東海地方の地銀幹部)。

そうした中、統合の有力候補とされるのが、岐阜県の十六銀行だ。過去に旧東海銀行系の岐阜銀行を統合しており、三菱UFJ系のシステムを利用するなど親密な関係が続いている。また、十六銀行は2021年10月から持株会社体制へ移行する予定だ。その目的は、事業参入による事業領域の拡大やグループ会社の連携強化としているが、傘(持株会社)を設けたことで、他の地銀を迎え入れやすい体制になっている。

再編に向かうメリットもある。他行と経営統合をすれば、日本銀行の支援策の対象となり、日銀に預ける当座預金に上乗せ金利がつく。また、5月に成立した改正金融機能強化法で、新たな制度が創設される。経営統合のハードルとなるシステム統合などの費用の一部(上限30億円)が支給される見通しで、7月に改正法が施行される。

直近では、福井県の福井銀行と福邦銀行や青森県の青森銀行とみちのく銀行が再編に動いている。筆頭株主である三菱UFJ主導で愛知県の再編が起きるのか。地銀業界における次なる焦点であることは間違いない。

藤原 宏成 東洋経済 記者

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ふじわら ひろなる / Hironaru Fujiwara

1994年生まれ、静岡県浜松市出身。2017年、早稲田大学商学部卒、東洋経済新報社入社。学生時代は、ゼミで金融、サークルで広告を研究。銀行など金融業界を担当。

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