パワハラ自殺で遺族に2度謝罪、豊田章男氏の心中 追い込んでしまったトヨタの企業体質への反省

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再発防止策を徹底できるかが問われている(写真:Kiyoshi Ota、Toru Hanai/Bloomberg)

トヨタ自動車の若手男性社員(当時28歳)が2017年に自殺したのは、上司のパワハラが原因だったとトヨタが認め、社長の豊田章男氏が2019年11月と今年4月の2度にわたって遺族に直接謝罪した。遺族とは今年4月7日付で訴訟外の和解が成立しており、トヨタは人事制度の見直しなど再発防止策を進めている。

パワハラが原因による自殺が起きてしまったことは、遺族や関係者にとって大きな悲しみであり、社会的にも簡単に許される問題ではない。あの優良企業のトヨタで重大なコンプライアンス(法令順守)違反の事例が起こったという二重の驚きもある。強い批判を浴びても仕方がなく、関係者には猛省が求められる。

2019年11月と今年4月、遺族に直接謝罪

一方、訴訟に発展しておらず、労災も認定されていない段階の2019年11月の時点で、章男氏は遺族宅を訪れて謝罪している。そして約1年半後の今年4月に和解に至り、さらにもう一度、章男氏は遺族に直接謝罪した。

章男氏には自身が社長として社員をパワハラから守れなかったという事実が突き付けられた。なぜパワハラの情報が上がってこなかったのか。なぜ周囲の従業員はパワハラに知らん顔を決め込んだのか。どうしてパワハラは許されたのか。考えれば考えるほど、愕然としたのだ。

経営者としての章男氏は、「従業員は家族だ」と考えている。大事な従業員を守ることができなかったのは、これまでのトヨタのやり方が間違っていたからではないのか。

2009年の社長就任から10年以上にわたって、トヨタの構造改革を進め、ある程度、手ごたえを感じていた。だが、このような悲しく痛ましい事件が起きてしまった。いま一度、従来のトヨタを変えなければいけない、と痛切に反省したのである。

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