「問答無用の転勤」に社員たちが突きつける"NO"

従来通りのやり方では会社は立ちゆかない

筆者も、かつて上司として転勤の辞令を伝えたときに、転勤したくないと抵抗する部下に何人も遭遇しました。

多くの人は、転勤先での仕事で成長機会があるとか、新しい職場が大いに期待しているなど前向きな状況を説明することで、なんとか承諾してくれました。一方で数名、納得できないと退職してしまったケースも出てしまいました。

転勤が決まっていた社員が退職すると、会社側、人事的には大変なことになります。転勤先で欠員になるので、かわりに誰かが転勤する必要がありますが、すでに人事が確定していますから、新たに候補者を探すのは簡単ではありません。場合によっては人事異動の大幅な見直しになることさえあります。

そのため、会社として転勤の辞令を伝えてからの退職は極力避けたいと考えます。そこでこれまでに各企業で行われてきたのが「打診」と呼ばれる「もし転勤の内示が出たらどうする?」という質問を何気なくぶつける方法です。

例えば、九州に新しい支社を作る予定で、新年度には3名の若手社員を転勤させる必要があり、その候補者に部下の1名があがっていたとしましょう。転勤の内示を出したあとに退職とならないように「そういえば、地方勤務もいいな?と言っていたけど、いまも同じ考えなの?」とカジュアルな会話を装って本心を聞き出したりするのです。ここで「介護している家族がいるから転勤は無理です」と言われれば、転勤は本人にとって困難な事態で、会社側も避けたほうが安全です。こうした打診により、辞令が出た後の退職を避ける工夫がされてきた会社が相当にあるのではないでしょうか。

しかし、さまざまな調査でわかるように、そもそも転勤をしたくない人が増え、従来のやり方で乗り切るのは難しいでしょう。

今後考えるべきは、転勤したい人、したくない人を、もっとしっかり分けることです。具体的には、転勤希望の社員と転勤は拒否する社員が同じ雇用形態でいいのか、ということです。

刻々と変化する環境

こうした発想が広がり、転勤の可否を雇用形態で「見える化」する会社が増えました。厚生労働省の調査でも約2割の企業が勤務地限定の社員制度を導入。転勤が可能な雇用形態の社員は人事としても転勤が退職につながるリスクがないと考えて辞令を出すことができます。

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