加えて、各社員のおかれた環境は刻々と変わります。子供の学校の問題から転勤ができず、転勤不可の社員として勤務していたが、子どもが大学を卒業して社会人になったので転勤が可能になった。そこで転勤が可能な社員に転換するなど、雇用形態も自在に転換できるようにすることで転勤可能な人材を確保することができます。
人事部としては転勤が可能な人材をできるだけ多く確保したいと考えるもの。そこで、定期的に働き方に関する意向を社員に確認して、その意向を前提とした柔軟な転換をすすめていくべきでしょう。
ただし、現状は、こうした柔軟な働き方に人事制度が対応していない会社が大半です。そもそも問題は転勤に限りません。勤務地や勤務時間など、制約がある社員も同じ人事制度上でキャリアを設計するのはあまりに無理があります。
広がる雇用形態の「見える化」
転勤もどんどん受ける側からすれば、仕事に人生の大半を捧げながら、制約があり配慮された社員と同じ処遇であったとすれば、それはそれで不公平感を抱くことになりかねません。
その点、雇用形態である程度明確に違いを「見える化」すれば、社員の不満はケアできます。一方で会社側にはなぜ、処遇面でそれだけの差をつけるのか、差をつけないのかといった、説明責任が求められることになります。複数の勤務形態に対応した等級・評価・報酬制度を準備する必要が出てきます。
そうなると会社が長年使ってきた人事制度は大幅に改定する必要が出てきます。新人事制度では、全社員がどの雇用形態で勤務するのか。本人の意向と会社の意向にギャップがあった場合に調整をする必要も出てきます。
転勤可の社員が少なかった場合には、現地で新規採用する必要も出てきます。これまではこうした手間やコストを考えて、働き方の違う社員が暗黙知的に勤務してきたのですが、それが限界を超えつつあり、これからさらに多くの会社が対応を迫られることになるでしょうし、それをしないと採用や人材の定着で苦戦することにもなるかもしれません。
こうした流れの中、金融機関のように転勤が当たり前と考えられてきた業界でも変化に対応する動きが出てきました。転勤だけでなく、勤務時間や勤務場所などでも勤務形態を分けて見える化する動きはこれからも加速していくと思われます。一方、新卒採用の大半は総合職として採用し、こうした細かな面には対応が追いついていません。このあたりの不整合をどのように整えていくのかが、今後の課題として続きそうです。
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