「無意識の偏見」があのテレビCMの炎上を招いた 男は男らしく、女は女らしくは、全くの幻想だ
日本全国で母親(だけ)がご飯を作るようになったのは、高度経済成長期、サラリーマンと専業主婦の組み合わせが増えたから。たかだか半世紀にすぎない。また「食育」という言葉で伝統的な(?)和食を守り、外食したり総菜を買ったりすることに、罪悪感を覚えるのもおかしい。離乳食の手作りにこだわるのも日本だけだ。
第2象限は、訴求対象が「女性」で、炎上ポイントが「外見・容姿」。一方の価値を下げて、それを引き上げましょうと発信している。化粧品メーカーやファッション関連企業は、若さや美しさをよしとした物語を描かざるをえない。それを強調しすぎて、女性から批判を受け、炎上するパターンだ。
取り上げるのは2016年に発表された資生堂のブランド「インテグレート」のCMである。
25歳の誕生日を迎えて憂鬱そうな女性が、同性の友人2人からお祝いされるシーン。友人が「カワイイという武器はもはやこの手にはない!」と言い放った後で、だからカワイイをアップデートしよう、という前向きなメッセージのつもりだった。
しかし、今どき25歳を“賞味期限”とするような発信は、共感されない。年齢を区切ってかわいさを押し付ける点が批判され、資生堂は、「大人の女性になりたいと願う人たちを応援したい意図が十分に伝わらなかった」とのコメントを出す結果となった。
唇を強調、「殿方におもてなし」…
第3象限は、訴求対象が「男性」で、炎上ポイントが「外見・容姿」。男性の願望を前面に出したような、性的メッセージの強い内容が問題となった。公共性の高い団体がゾーニングを間違えて、広い層を意識せず発信し、炎上するパターンといえよう。
2017年の宮城県による「涼・宮城の夏」のCMが一例だ。タレント・壇蜜さんの唇の強調、「殿方に涼しいおもてなしをする」というせりふなど、どう考えても男性の目線から見た作りである。
おひざ元の仙台市長(女性)が不快感を示し、女性県議全員が撤回を申し入れた。村井嘉浩宮城県知事は話題作りに成功したとしたが、県が多くの女性から反発されるような観光キャンペーンは、賛否両論で済む問題ではない。
そして第4象限は、訴求対象が「男性」で、炎上ポイントが「性役割」。男性が家事育児をしない立場に居座っている描写で、自分の身勝手さには気づかず、炎上してしまうパターンだ。
例えば2017年の牛乳石鹼のウェブCM。息子の誕生日、父親はプレゼントを買ってくるよう妻から頼まれたが、会社でミスした後輩を慰めるため、仕事が終わった後に直帰せず居酒屋に行ってしまう。飲んで帰り風呂から出た後、妻に謝り、改めて家族で誕生日を祝い直すものだ。そして「さ、洗い流そ。」のテロップ。飲みニケーションで子どもの誕生日を犠牲にする感覚は理解不能である。
これらのCMでは男性がほとんど家事に関与しない。夜の家庭には父親が不在なことが前提となっていて、これで結婚生活を送れることが不思議だ。欧米ならこの段階で離婚になるだろう。
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