「無意識の偏見」があのテレビCMの炎上を招いた 男は男らしく、女は女らしくは、全くの幻想だ

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批判されると、制作側は「差別の意図はない」と釈明するが、意図があったらヘイトスピーチだ。未婚の女性が結婚相手の条件として求めるものは、1位の「人柄」を別とすれば、2位は「家事・育児の努力」で、3位が「仕事への理解」。これらをまったくわかっていないから、女性の怒りを買ってしまう。

歴史をさかのぼると、ハウス食品「シャンメン」のCMで、「私、作る人。僕、食べる人」が抗議を受け、放送中止となったのが1975年。40年近く経った2012年でも、味の素が、仕事も料理も全部女性がやるさまを描いた。40年間で女性の二重負担が生じただけで、男性にとって平日の夕食作りは最もハードルが高い。

これは長時間労働の裏返しで働き方改革とまったく逆行する。一方で父親の夕食作りを描いたCMは好意的に受け止められている。

CMは昔、テレビでないと見られなかったし、ピンポイントでCMだけ見ることもできなかった。それがSNSに上がる時代になり、YouTubeなどでいつでも誰でも、繰り返し見られるようになったため、爆発的に拡散し、燃え上がる構造ができている。

制作する広告代理店ですら気づかない

とくに公共団体の場合、民間企業とは気の使い方が一段違う。だがそのことに制作側の広告代理店が気づかないケースも多い。

2018年に東京都が実施した東京五輪・パラリンピック大会のアイデア募集キャンペーンもそうだ。文言にあった「僕らのおもてなし」「僕らのアイデア」で、「僕」とは男性が自分を表す代名詞だ。が、アイデアを募る対象は、男性だけではない。森喜朗発言で突如クローズアップされたが、ほかにもさまざまな問題が起きている。

ジェンダーについての無配慮は差別に直結する。知らなかったでは決して済まされず、企業も団体も、人権感覚をアップデートし続けることが不可欠なのだ。

『週刊東洋経済』6月12日号の特集は「これが世界のビジネス常識 会社とジェンダー」です。東洋経済では、あなたの身の回りのジェンダー問題についての情報提供を募集しております。「会社でこんな女性差別的待遇を受けた」「男性育休を推奨しているが、休業中にも業務メールが絶えない」など、お心当たりのある方は、以下の投稿フォームまでご意見をお寄せください。https://form.toyokeizai.net/enquete/tko2104b/

 

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瀬地山 角 東京大学教授

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せちやま かく

1963年生まれ、奈良県出身。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了、学術博士。北海道大学文学部助手などを経て、2008年より現職。専門はジェンダー論、主な著書に『お笑いジェンダー論』『東アジアの家父長制』(いずれも勁草書房)など。

「イクメン」という言葉などない頃から、職場の保育所に子ども2人を送り迎えし、夕食の支度も担当。専門は男女の社会的性差や差別を扱うジェンダー論という分野で、研究と実践の両立を標榜している。アメリカでは父娘家庭も経験した。

大学で開く講義は履修者が400人を超える人気講義。大学だけでなく、北海道から沖縄まで「子道具」を連れて講演をする「口から出稼ぎ」も仕事の一部。爆笑の起きる講演で人気がある。 
 

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