アマゾンが「人の健康」対象に組んだ5つの稼ぎ方 医療や診療サービス、オンライン薬局など続々

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
(5)ヘルスケア&ウェルネス・プラットフォーム「アマゾン・ヘイロー」

2020年8月、アマゾンはフィットネス用ウエアラブルデバイス「アマゾン・ヘイロー」を発表し、アメリカでの提供を開始しました。これは、腕に巻く形のリストバンドに、加速度計、温度センサー、心拍数モニター、2つのマイクを内蔵し、ユーザーの健康データを集めるというものです。このデータを解析し、デバイスと連携するアプリにユーザーの健康状態を表示します。計測されたユーザーの個人情報は暗号化され、AWSに転送、保存・管理されます。リストバンドはアマゾンのECで購入可能です、連携するサブスクリプションサービスとあわせて提供されます。

主な機能は5つです。運動の強度や時間によってポイントを付与する「Activity」、心拍数や体温から睡眠を分析する「Sleep」、体脂肪率を測定する「Body」、声の状態を計測する「Tone」、最適なワークアウトを利用できる「Labs」です。

アップルと比べた場合の利点は?

このうち興味深いのが「Labs」です。アマゾンだけでなく、サードパーティーによるワークアウトを取り込んでいます。健康的な生活習慣を身につける最適なワークアウトをユーザーへ提案するにあたり、「オレンジセオリーフィットネス」「エイトフィット」「オープンフィット」など、サードパーティーのフィットネススタジオによるプログラムも提供しているのです。

以上5つのヘルスケア事業によりアマゾンは、AWS、そして「ビッグデータ×AI」を基盤にヘルスケア&ウェルネスのエコシステムを構築し、それを通してユーザーのヘルスケアデータを収集することで、エコシステムを強化する仕組みを作っています。

『世界最先端8社の大戦略 「デジタル×グリーン×エクイティ」の時代』(日経BP)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

アップルもヘルスケア事業へ参入し、アップルウォッチやiPhoneなども利活用しながらヘルスキットのエコシステムを構築しています。アマゾンとアップルのヘルスケア事業を比べると、アマゾンがカバーしているエコシステムはさらに広範囲となっています。

もっとも、アップルウォッチとアマゾン・ヘイローという2つのウエアラブルデバイスを比較する限りでは、カスタマーエクスペリエンスへのこだわり、インダストリアルデザインのこだわりという点では、アップルに軍配が上がります。また「ヘルスケア」機能に限定されないデバイスであることからも、どちらを身に着けたいかと問われたら、やはりアップルウォッチと答えざるをえません。

しかしながら、医薬品の販売という確固たる収益源を持ち、また事業者向けにもサービスを提供できるアマゾンのヘルスケア事業には、成長性を感じるところ。アップルとアマゾン、どちらがヘルスケアの覇権を握るのか、その答えが出るのはまだ先のことになりそうです。

田中 道昭 立教大学ビジネススクール教授

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

たなか みちあき / Michiaki Tanaka

シカゴ大学経営大学院MBA。専門は企業戦略&マーケティング戦略およびミッション・マネジメント&リーダーシップ。三菱東京UFJ銀行投資銀行部門調査役、シティバンク資産証券部トランザクター(バイスプレジデント)などを経て、現在は株式会社マージングポイント代表取締役社長。主な著書に『「ミッション」は武器になる』(NHK出版新書)、『アマゾンが描く2022年の世界』(PHPビジネス新書)、『GAFA×BATH 米中メガテック企業の競争戦略』(日本経済新聞出版社)など。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事