ウォルマートが世界最強小売企業の座を固めた訳 アマゾンに押され「時代遅れ」と言われたが今や

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「時代遅れ」と揶揄されたこともありましたが(写真:David Swanson/Bloomberg)
DX(デジタルトランスフォーメーション)の勝者が次に目指すのは「脱炭素」と「公平・公正」――。立教大学ビジネススクールの田中道昭教授が、テスラ、アップル、セールスフォース、ウォルマート、マイクロソフト、ペロトン、アマゾン、DBS銀行のグランドデザインを徹底解説した新著『世界最先端8社の大戦略 「デジタル×グリーン×エクイティ」の時代』より、ウォルマートの章を一部抜粋、再構成してお届けします。

コロナ禍で「5年分の成長を5週間で達成」

1962年創業のウォルマートは、売上高60兆円を超える「世界最大の小売業」です。アマゾンでさえ売上高は42兆円、日本のイオングループの売上高が8.6兆円です。こうして数字を並べてみれば、ウォルマートの巨大さがおわかりいただけるでしょう。

ウォルマートの代名詞といえば「EDLP(エブリデイ・ロー・プライス)」です。「特売」を廃し、また年間を通じた低価格を押し出すことで、アメリカはもとより世界中の消費者から支持されてきました。

2021年度(2020年2月〜2021年1月)の年間売上高は5592億ドル(約60兆2200億円)、従業員数が220万人超。新型コロナウイルスの感染が世界的に広がった2020年2〜4月(第1四半期)でさえ既存店舗の売上高は前年同期比10%増と、およそ20年ぶりとなる高い増収率を記録しました。

2021年1月、ウォルマートは初めてCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)に出展し、ダグ・マクミランCEOが2020年のコロナ禍での成果を強調しました。

⃝ コロナ禍において従業員の安全と健康を最優先。サプライチェーンを継続させ、サプライヤーや取引先など社外への支援や新たな雇用を創出した
⃝ コロナ禍で急増したEC需要に対応し、非接触型サービスを拡充。2020年9月には、有料会員制プログラム「ウォルマートプラス(Walmart+)」をスタート。ネットスーパーの当日配送サービスを無制限で利用できるようにした
⃝ 診療所事業の「Walmart Health」が進展。今後はオンラインとオフラインなどオムニチャネルでヘルスケア事業を展開していく計画
⃝ 気候変動問題への対応として2017年から「プロジェクトギガトン」が進行中。2030年までにサプライチェーンで発生するCO2を累計で1ギガトン(10億トン)削減する方針
⃝ DEI(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)に触れて「多様性のあるチームが勝ち、インクルーシブな環境が成功をもたらす」と発言

やはり1月に開催された小売業界の展示会NRF2021には、チーフカスタマーオフィサーのジェイニー・ホワイトサイド氏が参加しました。ここでは、オンライングロサリーの急増に伴い、ストアピックアップと配送サービスが2021年度第1四半期に300%成長し、「5年間分の成長を5週間で成し遂げた」と語りました。

またホワイトサイド氏は、この急成長を可能にしたのが、ウォルマートの巨大な店舗網であることを指摘し、新型コロナの影響で来店客数が減ってもなお、店舗が重要な役割を担うという見方を示しました。

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