ウォルマートが世界最強小売企業の座を固めた訳 アマゾンに押され「時代遅れ」と言われたが今や
EC全盛の時代にあって「エブリシングストア」アマゾンに押され、「世界最強の小売企業ウォルマートは時代遅れ」と揶揄されもしました。しかしウォルマートは「実店舗で売る」ことに固執せず、オンラインを含めたオムニチャネル化を進め、サブスクリプションサービスを始め、配送まで手掛けるようになりました。デジタルネイティブ企業特有の、カスタマーセントリック重視の経営を、ウォルマートは完全にものにしました。
より具体的に事業を見るなら、DXにおいて最も重要な「デジタルで顧客とつながる」作業を着実に進めたことが大きいでしょう。これは日本の小売企業と比較すると、違いが鮮明になります。毎日のように利用されるコンビニエンスストアでさえ、顧客の名前すら把握していません。
ウォルマートもかつてはそうだったのです。しかしDXを経て、顧客をIDで管理し、決済データも収集するようになりました。これによりウォルマートは、顧客との間に継続的で良好な関係を築き上げる体制を作り上げました。
世界最強の小売企業の強みを否定せず最大限伸ばした
そして強調したいのは、ウォルマートのDXが、世界最強の小売企業という強みを否定せず、それどころか最大限に伸ばすものだった、という事実です。小売のための店舗という機能はそのままに、店舗を「自社ECの倉庫」や「配送拠点」「ECのストアピックアップ」(顧客がECで注文したものを受け取りに来ること)として再定義したのです。
「小売」に限定するならば、ウォルマートはアマゾンを超える存在になりつつある。私はそう見ています。
アマゾンは、小売の事業者としてのアマゾンとAWSの2つの柱で構成される世界最強のテクノロジーカンパニーです。非デジタルネイティブであるウォルマートが、テクノロジーでアマゾンに勝るのは不可能でしょう。
しかし、小売事業者としてみれば、従来からの店舗プラットフォームを背景としたオムニチャネル展開、顧客価値向上のためのデータの使い方、顧客の「かゆいところに手が届く」宅配のバリエーションなど、アマゾンの先を行く取り組みが散見されます。非デジタルネイティブ企業が、世界最強アマゾンの牙城を崩す。そのためのヒントを、ウォルマートは私たちに示してくれています。