あれほど人気だった「着うた」が消滅した深い事情 開発の当事者が語る「スマホになじまない理由」

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「ガラケーが主流だったころは、auなどの各キャリアが目玉として着うた関連のサービスを展開し、日本独自の文化として根付かせようとしました。

しかし、日本はスマホ事業で後れを取り、コンテンツサービスはGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)に支配された。GAFA以外のサービスで伸びているのは、音楽だとSpotifyぐらいです。その波にのまれ、日本独自のサービスだった着うたも衰退した」

4Gへの移行が「転換点」だった

かつて音楽を「買う」のはCDが主流だったが、着うたは「今すぐ聞きたい」というニーズに応えた点で画期的なサービスだった。

「ダウンロードして歌を買うということはそれまでになかった文化で、ユーザーにとっても新鮮でした。2002年に登場した当時は、iTunesストアで配信が開始されるよりも前でしたから。毎週、金曜日に放送される『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)の放送時には、サーバーがパンク寸前になるほどダウンロードが殺到しました」(同)

ちなみに、最もダウンロード数が多かった曲は、GReeeeNの「キセキ」(2008年4月配信)で、配信から約1年で590万ダウンロードを記録(着うたフルとの合算値)したという。だが、携帯の通信規格が「3G」から「4G」に移行するときに“転機”が訪れた。

「3Gの売りはスピードで、大容量のデータを短時間でダウンロードする着うたは、3Gを象徴するサービスでした。スマホに対応した4Gの時代には、その機能を生かすために、新しいサービスへの転換が必要だったが、それができなかった。着うたに代わって、音楽のストリーミングサービスが登場したのは象徴的です」(同)

結局、着うたは「4G」の到来とともに衰退に向かい、2016年に消滅した。生みの親として、悔しさはなかったのか。

「悔しさはありません。サービスが時代とともに変化するのは当たり前です。ですが、音楽そのものは廃れません。4Gでストリーミング系がはやり始めたときに、いち音楽好きとしては、『夢のような時代が来た!』と思ってワクワクしました。レコードを買って聴いていた数十年前からすれば、千円で無尽蔵に音楽が聴ける今は、信じられない進歩です。いよいよ5Gとなり、今後はどんなサービスが生まれるのか、今から楽しみです」(同)

 平成後期に青春時代を過ごした人にとっては、設定した「うた」に、当時の思い出が詰まっているはず。過去を懐かしみつつも、「5G」の新たなサービスに期待したい。

(取材・文=AERA dot.編集部・飯塚大和)

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