東大は「ジェンダー改革」で何を変えたいのか 女性が新体制の過半数になった最高学府の覚悟

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「2割は通過点」と当時の理事が話したが、私としては、3割、本来は5割がいいんだと思う。欧米やアジアの多くのエリート校は5割に達している。競争力という意味でもトップの学生を確保したい。ただ、大学の入試制度や日本社会、文化など、さまざまな問題がある。

何をすればもっと効果的なプランができるか、今策定している最中だ。時期や数字についてはまだ言えない。藤井総長の任期は6年間だが、必ず今と違う東大にしたいと考えていると思うので、その中で私は力添えできればと考える。今年度中には具体的な文言が入った総長プランができる。そこで「変わる東京大学」を示せれば。

━━「変わる東京大学」ですか。トップが替われば、その下も替わりますよね。

そう。夢があっていいでしょう。

実際、少し雰囲気は変わった。9人中5人が女性ということで。また女性というだけでなく、政府出身では元財務省副財務官の石井菜穂子さん、グーグルからはバイスプレジデントの岩村水樹さんなど、バックグラウンドがかなり多様になった。

━━五神前総長時代には、民間のマンションを借り上げ、3万円を控除する形で、地方出身の女性学生に貸し出しました。これには発表直後から、賛否両論が湧き起こりましたが……。

前総長の時代は特に後半、ダイバーシティや男女共同参画に、非常に力を入れていた。最終年度には総長自ら、高校生や学内の女性学生たちと対話集会をしたりしていた。女性学生とのZoomカフェでは私もコーディネートをしていた。それもあって前総長は退任する際、「これは未完のプロジェクトだからがんばってほしい」と。従って前執行部からの引き継ぎと認識している。

150年間の歴史で日本人・男性がメインだった

林香里(はやし・かおり/東京大学理事・副学長、大学院情報学環教授。1987年南山大学外国語学部英米科卒。ロイター通信等を経て、2004年東京大学大学院情報学環助教授、2009年教授。専門はジャーナリズムやマスメディア論で、ジェンダー問題に関する発言、著作も多い(撮影:尾形文繁)

東大は研究推進と学生教育を目的とする高等教育機関。日本はもちろん、世界でトップクラスの研究を目指し、学生たちを教育するのがミッションだ。ありがたいことに、今まではトップのエリート校と言われており、それを維持するためにも、よい教育とよい研究の場を作っていきたい。

とはいえ、東大は150年間の歴史の中で、やはり日本人男性のための大学だった。最初の約70年は男性だけで、1946年に初めて女性が入ってきた。競争力をつけるため、これからも優秀な人を入れたいが、それは男性に限らない。女性、LGBT、留学生、多様な人たちに来ていただきたい。

学内にいる女性学生や、ほかのマイノリティ(少数者)、たとえば性的マイノリティやハンディキャップのある方も含め、そういう方々が不自由なく才能を発揮できるような場所にしたいと思う。まずはできることからだ。女性学生との対話やイベントでは、キャリアパスの話ができるようにするなど、1つ1つ検討している。

━━エリートと言えば、毎年発表される世界大学ランキング(英タイムズ・ハイヤー・エデュケーション)では、東大は2021年36位。欧米だけでなく、中国・清華大学やシンガポール国立大学の後塵を拝しています。これは閉塞感から抜け出せない日本企業とも重ね合わせてしまいますが、女性活用や多様化での遅れも関係していると思いますか。

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