東大は「ジェンダー改革」で何を変えたいのか 女性が新体制の過半数になった最高学府の覚悟

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36位という数字の一因は、留学生比率が低いことがある。それを考えると、世界に向けた成長戦略を考えていかなければと思う。これまで多くは日本語で研究や教育がなされてきたが、英語や第2外国語において、語学のできる学生にはさらに学べるプログラムを増やすなど、工夫が必要。留学生や外国からの研究員にも、開かれた大学になる必要がある。

━━自分にも記憶がありますが、それでも学生の頃は、むしろ女性のほうが成績が上でした。それが就職するにつれて、出産や育児などを経て、だんだんレールから外れていったように思えます。これは教育してきた側から見てもったいないとは思いませんか。

性別役割で言えば、家庭でも男女の分担をすればいい。多くの女性は家事や育児を担い、かつ仕事もしている。男性は仕事一筋でいける人が多い。が、それが男性にとって幸せかというと、そうでもない。男女共同参画の問題は女性というより男性の問題だ。

男性が家事や育児を分担すると、それがいい仕事や教育、研究にもつながる。女性の負担が減るだけでなく、男性も女性も生活の中で多様な価値観を学ぶことで、世の中のニーズに対するアンテナを、もっともっと張り巡らすことができる。文系・理系を問わず、プロフェッショナルでクリエイティブな仕事の場合、新しい発想やアイデア、インスピレーションを磨くことが重要なのだから。

こういう議論をすると、「また女性が何か言ってる」「家事の分担ってどうして」「面倒なことはAI(人工知能)にやらせよう」とネガティブな話になるが、そうではない。ダイバーシティは、もっとコンストラクティブで、人生が豊かになるための新たな社会構想なのだ、と考えてもらいたい。

リーダーになりたい女性が入ってきてほしい

━━東大のダイバーシティ担当として、入学を志望する女性の高校生たちに期待すること、注文することはありますか。

これから東大に入りたい女性学生には、トップを目指し、リーダーになりたい女性に入ってきてほしい。それは大組織の社長を目指す、ということばかりでなく、発明や芸術など、得意分野のトップということだ。社会の先を行く、先見の明を持ってリードしていく、あるいは「面白いことをしたい」と思うひとたちが東大に来て、そういう人たち同士でネットワークを作っていってくれるといいな、と思う。

東大には150年の歴史に培われた重厚な学術リソースがある。そのリソースを有効活用し、それを社会に還元し発信していける人が集まり、ネットワークを作り、その中から、また新たなチャレンジや試みが生まれ、アイデアが出てくる。そういう好循環を作ってくれる元気な女性に来てほしい。

『週刊東洋経済』6月12日号の特集は「これが世界のビジネス常識 会社とジェンダー」です。東洋経済では、あなたの身の回りのジェンダー問題についての情報提供を募集しております。「会社でこんな女性差別的待遇を受けた」「男性育休を推奨しているが、休業中にも業務メールが絶えない」など、お心当たりのある方は、以下の投稿フォームまでご意見をお寄せください。https://form.toyokeizai.net/enquete/tko2104b/

 

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大野 和幸 東洋経済 記者

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おおの かずゆき / Kazuyuki Ohno

ITや金融、自動車、エネルギーなどの業界を担当し、関連記事を執筆。相続や年金、介護など高齢化社会に関するテーマでも、広く編集を手掛ける。

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