そして、3月に入り見合いをしたのが、今回成婚を決めた修一(仮名、45歳)だった。お見合いを終えて、菜穂子は、弾んだ声でこんな連絡を入れてきた。
「今回のお相手は、違和感とか疑問点とか、まったくなかったんです。これまでは会話のキャッチボールができなかったり、こっちの質問に的外れの答えが返ってきたりして、居心地が悪いというか、腑に落ちないようなところがあったんですね。けど、婚活も長くなっていたから、“もうここでいい。ここで決めよう“という気持ちで交際希望を出していたんです。今日の方は、それがまったくなかったので、ぜひ交際希望でお願いします!」
この感覚は、修一も同じだったようだ。婚活を始めて1年になる彼は、「これほど会話が楽しめた女性はいなかった」と仲人に告げていたようだ。
週2回会ってデートをした
通勤で使っている乗換駅が同じだったことも、功を奏した。交際がスタートするや、2人は週の半ば、水曜か木曜の仕事終わりに乗換駅で待ち合わせをして、軽く食事をする。週末は、土日のどちらかで会って、少し長いデートをする。
1カ月のうちに8回ほど会い、4月に真剣交際に入ったかと思ったら、その後、すぐに修一がプロポーズをし、それを菜穂子が受けて、ゴールデンウィーク明けには、結婚を決めてしまった。
5月の終わりに成婚の報告をしにやってきた菜穂子が言った。
「これまで、“もうこの辺でいいや“と無理矢理結婚を決めようとしていたときは、お相手に違和感を感じても、それを見ないように、見過ごすように自分に言い聞かせてきた。だから、会うのがどんどん苦しくなっていったんですね。
ところが、修一さんのことは、会うたびに彼を好きになっていくんです。もちろん、話をしているときに、私とは違う意見だったりして、ムカッと来ることもあるんですよ。ただ、彼のことが“好き”という気持ちが根底にあるから、時間が経つと、“ああ、そういうふうに考えたいのか”と、それを受け入れようと思うし、許すこともできる。好きな気持ちがあるってすごく大事なんだと、つくづく思いました」
成婚退会をしていく人たちは、みんな菜穂子と同じことを言う。そして、これまで何百組もの成婚者を送り出してきたが、成婚に結びつく相手は、お見合いで出会ったときから違和感や疑問点がなく、探していたピースの凸と凹がしっかりと重ねられたような感覚になるのだ。
そんな相手にいつ出会えるかわからないのが婚活なので、途中で疲れて離脱してしまう人も多い。
現代は右にならえではなく、個人が個人の生き方を自由に選択する時代だ。結婚も個人の選択で、したい人がすればいい。他人と暮らすことを窮屈だと思うなら、1人の人生を謳歌すればいい。
しかし、「1人で歳を重ねていくのは寂しい。結婚がしたい」と思うのであれば、自分としっかり重なり合うピースを探し続けてほしいと思う。
毎回言っていることだが、どういう人が結婚できるか。それは、諦めすに出会い続けた人なのだから。
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