大坂なおみ「厳罰」の背景にテニス界の地盤沈下 国際テニスのドンを強硬措置に走らせた焦り

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大坂なおみによる記者会見拒否に対して、「4大大会への出場停止」という厳しい措置を持ち出したテニス協会首脳の意図はどこにあるのか(写真:Pete Kiehart for The New York Times)

メッセージは強烈かつ迅速だった。大坂なおみ選手が試合後の記者会見をキャンセルしたわずか数時間後に発せられた警告のことである。今後も記者会見の場に姿を見せない場合、テニス協会首脳は大坂選手を全仏オープンだけでなく、おそらくはウィンブルドン、全米オープン、全豪オープンからも追い出すことになる——。

4大大会(グランドスラム)出場停止という厳しい措置が持ち出された背景には、すべての選手を同じルールに従わせる必要性に加えて、メディア露出を維持しようともがくテニス界の戦いがあったと協会の現職および元幹部は明かす。予算縮小に苦しむメディアではテニスに対する取材の優先順位が下がり、さらにさまざまなタイプのコンテンツが世の中にあふれる中で視聴率争いも厳しさを増している。

選手のメディア露出が視聴率に影響

テニスで最も名声あるグランドスラムを主催する組織がコロナ禍で被った多額の損失を穴埋めしようと躍起になる今、何としても避けたかったのは、大坂選手のような若いトッププレーヤーが記者会見に応じるか応じないかを自ら選ぶようになる展開だった。

そんな選択肢を許せば、年に4回、テニスのイベントと大会を世界にタダで宣伝する機会が損なわれ、選手のメディア露出から生まれるテレビ視聴率やスポンサー契約の価値が低下しかねない。

「テニスに対する関心と有名選手のメディア露出との間には関連性がある」と全米テニス協会(USTA)の主席広報担当クリス・ウィドマイヤー氏は指摘する。「有名選手のメディア露出はテレビ視聴率に間違いなく影響する。テニス競技そのもの、趣味程度で行うテニスへの関心度にも当然、影響がある」。

大坂選手を追放処分にするとの警告が出された2日後、そして大坂選手が全仏オープンを棄権した翌日の6月1日、グランドスラム主催者は新たな共同声明を発表した。心の病と戦っていることを明らかにした大坂選手を称え、支援を約束し、選手の競技体験の改善に向けて努力すると誓う内容だった。

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