大坂なおみ「厳罰」の背景にテニス界の地盤沈下 国際テニスのドンを強硬措置に走らせた焦り
声明は同時に「選手のランキングや地位に関係なく」公平な競技環境を維持する必要性も強調した。「スポーツのルールや規則は、ある選手が別の選手に対して不当に有利にならないようにするためにある」。
グランドスラムの首脳陣が団結を示しためずらしい瞬間といえる。だが、全米プロバスケットNBAのスター、ステフィン・カリー選手をはじめとするスポーツ界の大物からは、過酷な処罰をちらつかせて大坂選手を脅したとしてテニス協会幹部を非難する声があがっている。そうした批判は、大坂選手が全仏オープンを棄権し、うつ病に悩まされていたと告白した後、さらに強まった。
スター選手は年齢的に現役引退のタイミングに
テニス界は今、得られる限りのメディア露出を必要としている。セリーナ・ウィリアムズ、ロジャー・フェデラー、ラファエル・ナダル、ノバク・ジョコビッチという4大スター選手は30代半ばから後半にさしかかり、年齢的に現役引退のタイミングが近づく。
そうした中、アメリカのフロリダ州で育ちながら日本人選手としてプレーする23歳の大坂選手は、テニス界にとって新たな世界的スターの座に最も近い存在といえる。
テニスが生み出す年間収入はおよそ20億ドル。だが、テニスをプレーすることだけで生活できるのは、男女ともにランキング上位100位前後までの選手に限られる。選手らは今、試合の運営や収益の配分方法について以前よりも大きな発言権を要求し、収入拡大策を求めてテニス協会首脳にプレッシャーをかけるようになっている。
世界の大半、とりわけアメリカの伝統的なメディア企業では近年、テニス報道が格好の経費削減対象になっている。テニスの最重要大会ウィンブルドンでは、少し前ならマイアミ・ヘラルドのような大手の地方報道機関の取材陣を必ず見かけたものだが、今ではこの種のメディアはグランドスラムに1人も記者を派遣していない。
そして、今回のパンデミックでテニス取材の後退に一段と拍車がかかった。全仏オープンのある広報担当者は、2019年大会では記者証の申込数が800程度あったのに対し、今年は500しかなかったと話した。今年の冬に開かれた全豪オープンに記者を派遣したアメリカの大手報道機関はニューヨーク・タイムズだけだった。