大坂なおみ「厳罰」の背景にテニス界の地盤沈下 国際テニスのドンを強硬措置に走らせた焦り
前出のウィドマイヤー氏によれば、全米オープンの記者証申込数は10年前の1500から今回は1150程度にまで減った。フロリダ州南部の各紙は以前3人の記者を派遣していたが、今では1人も派遣しないことが多い。カリフォルニア州の各紙はかつて記者証を6人分申し込んでいたが、今では1人分という場合もある。
2015年に全米オープンの独占放送を始めたスポーツ専門チャンネルESPNは、1回の放送につき通常は平均して100万人強の視聴者を獲得してきた。ところがコロナ禍の中で無観客開催となり、多くのトップ選手が棄権した昨年の全米オープンでは視聴率が47%も下落した。この大会の女子シングルスで優勝したのが大坂選手だった。
記者会見は興行価値の維持に不可欠
男子テニスATPツアーの創設者で、長年にわたり代理人やトーナメントプロモーターを務めてきたドナルド・デル氏は、どのようなスポーツであれ人気を高め熱心なファンを引きつけるには、スター選手に対するメディアのアクセスが絶対に欠かせないと話す。
「メディアがアクセスすることで選手の知名度が上がり、大坂、フェデラー、ナダルといった選手がトーナメントに出場すると言うことで視聴率が高まる流れが生まれる」とデル氏。
「グランドスラムでの記録樹立がかかった決勝でセリーナが敗れたとしよう。そうしたとき、記者会見場に向かうのがセリーナにとって面白いはずはない。だが、それもテニスの一部。これは、このスポーツをさらに大きくする試みの一部でもあるのだ」
こうしたことは、ビジネスとしてのテニスの損益に直接的な影響を及ぼす可能性がある。というのは、記者会見に臨むトップ選手の背後に備え付けられたパネル広告に社名を入れたり、選手の前に設置されたマイクの傍らに自社製品のミネラルウォーターやエナジードリンクのボトルを置いたりするために、スポンサー企業はしばしば数百万ドルという大金を出しているからだ。選手らが会見に出席しなくてもよいということになれば、そうしたスポンサー契約の価値は急落することにもなりかねない。
(執筆:Matthew Futterman記者)
(C)2021 The New York Times
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