「2代目古畑任三郎」が到底実現しない根本的理由 なぜ田村正和さんの古畑は今なお支持されるのか

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たとえば田村さん演じる古畑は事件現場にセリーヌの自転車に乗って現れていましたが、その姿だけで視聴者を引きつけられたのは、キャラクターと俳優本人に華があり、表情や仕草などの細かい演技に魅力があったからでしょう。

田村さんは、「撮影現場で台本を読まない」「それでいてNGを出さない」「脚本をリスペクトしてセリフを勝手に変えない」「食事や散髪などの無防備な姿を人に見せない」など、多くのエピソードで知られていました。

また、今回さまざまな記事が報じられたことで、初めて妻の存在やプライベートを知った人も多いのではないでしょうか。プライベートの姿や生活感を漂わせることはなく、演じているとき以外も田村正和で居続け、イメージ通りの「カッコイイ」をやり切って視聴者を楽しませられる俳優だったのです。

これらのエピソードやスタンスは、主演俳優としてのプロ意識であり、田村さん自身の美学にも見えました。「本物の主演俳優とはこうあるべき」「俳優に先入観はいらない」というプロ意識や美学を持つ田村さんだからこそ、古畑任三郎という役が成立し、ヒット作になったのでしょう。

そのうえで田村さんは、一貫してテレビドラマの主演にこだわっていました。映画俳優でも舞台俳優でもなく、テレビドラマ俳優。自他ともに認めるそんなテレビドラマ俳優は、もはや現在の芸能界にはおらず、その意味で「2代目・古畑任三郎」に最適な人材は見当たらないのです。

「超一流の対決」の再現は難しい

「古畑任三郎」を語るうえで、もう1つふれておかなければいけないのは、同作が基本的に古畑と犯人との2人芝居であること。しかも多くの場合、現場から動くことはなく、1~2カ所で行われる会話劇でした。

たった2人で、動きがほとんどない会話劇で、視聴者を引きつけなければいけない。古畑も犯人を演じる俳優も、そんな脚本・演出をこなせる存在感の大きさと演技力が求められていたのです。

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