「2代目古畑任三郎」が到底実現しない根本的理由 なぜ田村正和さんの古畑は今なお支持されるのか

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「警部補 古畑任三郎」の記者会見に登壇した若き日の田村正和さん(右)と三谷幸喜さん(1994年3月15日、写真:東京スポーツ/アフロ

三谷さんはもともと演じる俳優をイメージして脚本を書く“当て書き”を好む人で田村さんの「古畑任三郎」は、その最たるところ。「古畑任三郎」は、犯人捜しをする通常のミステリーとは異なり、最初に犯人を明かしたうえで事件解決の過程を見せていく“倒叙”と言われる形式の作品です。

三谷さんが別の主人公で倒叙ミステリードラマを手がける可能性こそあるものの、それは「古畑任三郎」ではなく、また、「『古畑任三郎』に匹敵するヒット作になるか」と言えば、難しいものがあるのです。

これほどモノマネされた役はない

「古畑任三郎」に匹敵する倒叙ミステリーを作ることの難しさは、「田村正和さんという俳優の偉大さ」に直結します。

田村さんは1970年代に「二枚目」「ハンサム」の象徴的な存在として人気を博したあと、1980年代に「うちの子にかぎって…」「パパはニュースキャスター」「パパは年中苦労する」(いずれもTBS系)などのコメディに三枚目として出演。当時は「田村正和にそんな役をやらせていいのか?」と話題になったほどのインパクトを人々に与え、そのギャップが受けていずれもヒット作になりました。

さらに田村さんは、「ニューヨーク恋物語」「過ぎし日のセレナーデ」(フジテレビ系)などで、本来の色気あふれる二枚目ぶりも披露。TBSで親しみの湧くコメディ、フジテレビで大人のラブストーリーを演じつつ、さらにそのどちらでもない新たな顔として「古畑任三郎」を演じていたのです。

二枚目、三枚目、古畑……3つの路線は振り幅が大きく、それぞれ別の技術で演じているにもかかわらず、いずれも視聴者に“田村正和”を感じさせていました。現在の人気俳優も言われがちな「何を演じても田村正和」というフレーズは、敬愛を感じさせるほめ言葉であり、希有なスター俳優であることを物語っていたのです。

「古畑任三郎」に話を戻すと、とんねるず・石橋貴明さんや木村拓哉さんから一般人まで、これほどモノマネされたキャラクターと俳優は、なかなか見当たりません。これは「それだけ強烈な存在感があった」ことの証しであり、単に「ワンパターンでモノマネがしやすいから」ではないでしょう。実際、田村さんは一定の型にはめるような演技をしているように見えて、実は「心の機微や仕草などを細かく表現できる俳優」という評価も受けていました。

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