精神科医が解説する大坂なおみ「うつ告白」の勇気 突発的な行動や発言が出るときの脳の状態

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ですから、第三者がストップさせるしかなかったでしょう。それができるのは、医者です。ドクターストップがかかったとすれば、関係者やファンも「しょうがない」と納得せざるをえないでしょうから。

一般的に「うつ病」は、よっぽど重症にならない限り、他人が見てもわからないものです。実際、うつ病で入院する患者さんが、前日まで会社で普通に働いていて、会社の同僚もまったくその人がうつ病だと気づかないことはよくあるのです。

それは、自分が病気であることを他人に知られたくない。「取り繕い」という心理が働くからです。つまり、本当は「元気がない」「もう限界状況」なのに、人前では、それを知られたくないために「陽気に」「明るく」ふるまうのです。そのため、精神的エネルギーが猛烈に消耗して、精神的にさらに疲れ、うつ病を悪化させます。

「うつ」を明かした大坂選手の勇気

今回「うつ」をカミングアウトした、大坂選手の勇気はすごいと思います。逆に、今までそうした「弱音」をはけなかったこと、プレーヤーとして「強い大坂なおみ」を演じ続けてきたのは、ものすごいストレスだったはずです。一般的に、病気のカミングアウトをすることで肩の荷がおりる。精神的に楽になる場合が多いです。

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また、世界のマスコミや有名なテニスプレーヤーたちが、今回の「うつ」のカミングアウトについて、共感的なコメントを多く寄せていたのにはホッとしました。

メンタルの問題に対しては、まだまだ差別や偏見が強く、さらにバッシングが強まった可能性もありえましたから。

とにかく、今はそっとしておいて、ゆっくり休んでいただきたい。そして、東京五輪のテニスコートで、再び活躍する姿を見せてほしいです。

樺沢 紫苑 精神科医、作家

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かばさわ しおん / Shion Kabasawa

1965年、札幌生まれ。1991年、札幌医科大学医学部卒。2004年からシカゴの イリノイ大学に3年間留学。帰国後、樺沢心理学研究所を設立。SNS、メールマガジン、YouTubeなどで累計40万人以上に、精神医学や心理学、脳科学の知識・情報をわかりやすく伝え、「日本一、情報発信する医師」として活動している。『学びを結果に変える アウトプット大全』(サンクチュアリ出版)、『読んだら忘れない読書術』(サンマーク出版)、『脳のパフォーマンスを最大まで引き出す 神・時間術』(大和書房)など著書多数。

 

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