パレスチナ問題「日本人が知らない」世界の報じ方 中東の火種が東南アジアのSNS上で沸騰の理由

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アメリカや中東など各国の地理的、政治的背景や宗教によっても、大きく異なることは言うまでもない。ちなみに、マレーシアは同じ東南アジアで世界最大のイスラム教人口を抱えるインドネシアや、ブルネイと連携して3カ国で、イスラエルの暴力を非難する共同声明を出した。インドネシアでも、若者層を中心にSNS上でパレスチナへの連帯を呼びかけるムーブメントは高まっているという。

パレスチナ自治区の難民キャンプで生まれ育った子供たち。3世代にわたって難民キャンプ暮らしを余儀なくされているケースも少なくない(ヨルダン川西岸ベツレヘム、筆者撮影)

中山副大臣ツイッターから見る根本の問題

では、日本での報じられ方はどうか。そもそも、日本国内においてパレスチナ問題が大きく取り上げられるのは、今回のようなガザ地区での衝突が激化したときなどに限られる傾向にある。ハマスのロケット弾によりイスラエル側に先制攻撃があった点や、イスラエルでも罪のない子供などが犠牲になっていることよりも、パレスチナ側の被害がクローズアップされた報道に偏っているのではという指摘も少なくない。

確かに、ハマスがガザ地区の境界を超え、テルアビブに及ぶまでロケット弾の飛距離を伸ばし、市民生活への脅威が増していることはイスラエル側にとって看過できない事実である。日本政府はイスラエルとパレスチナが平和裡に共存する「二国間解決」を掲げるなか、中山泰秀防衛副大臣のイスラエル側を擁護するツイッター発言に批判の声が渦巻いたことからも、日本ではパレスチナに同情する声が根強いことは明らかだ。

ただ、現職の副大臣の発言として適切かは別として、中山副大臣が意図したところは、先制攻撃をしたのがテロ組織ハマス側であり、罪のないイスラエル市民がその脅威に晒されているがゆえテロ行為そのものを許すべきではない、と解釈できるものとも言える。

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