パレスチナ問題「日本人が知らない」世界の報じ方 中東の火種が東南アジアのSNS上で沸騰の理由
しかし同時に、イスラエル・パレスチナ双方における犠牲者の数や被害の規模は大きく異なり、またそもそも土地を巡っての長年の争いが、空爆などを伴った武力衝突だけに矮小化され、根底にある問題が解決されないまま「停戦」の名のもとに世の中の関心が薄れていくことこそが、最大の懸念であることも確かだ。
ガザ地区に及んだ武力衝突以前に発生していた、ユダヤ人による入植問題はなんら解決していない。目先の攻撃がなぜそもそも起きたのか、その根本を見つめないことには、永遠にこの負の連鎖が消えていくことはないだろう。
“宗教対立”に置き換えられてしまう危うさ
さらに気になるのは、そもそも土地を追われたパレスチナ人とユダヤ人による入植活動で既成事実化されかねない占領問題が最大の焦点であるはずが、「イスラム教徒VSユダヤ教徒」という対立構図での憎悪や分断が加速する動きだ。明確に白黒付けがたい問題がわかりやすさを求めるがあまり「善悪」の構図で論じられることにより分断が深まることは、これまで世界の多くの事象から明らかだ。
現に、アメリカでもガザ地区における被害の大きさが報じられるにつれ、ユダヤ教徒を対象にしたヘイトなどが次々に報じられているほか、中東諸国でもイスラム教徒が連帯してユダヤ教徒に対する憎悪を募らせる構図も加速する。マレーシアのSNS上でシンパシーを募らせる書き込みからも、若者層を中心に問題を正確に捉えきれぬまま、同じイスラム教徒だからという理由でイスラエルに対しての憎悪を募らせているように見受けられる書き込みも少なくない。
首都クアラルンプールに住むイスラム教徒のアリフさんは言う。「今、SNS上では驚くほどにパレスチナへの哀悼を表すことに熱狂している知人らのコメントであふれています。でも、彼らすべてがこの問題を正確に理解しているとは到底思えないのです。例えば、私の友人でハマスという組織についてきちんと理解している人などあまりいないでしょう。皆、同じイスラム教徒が苦しんでいるから……その事実だけで彼らにとっては十分なのです」。
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