パレスチナ問題「日本人が知らない」世界の報じ方 中東の火種が東南アジアのSNS上で沸騰の理由

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パレスチナへの連帯を示すためフォトショップでマレーシア国旗とパレスチナの旗をイメージして彩られた、首都クアラルンプールのシンボル、ペトロナス・ツインタワー(写真:Facebookより)

さらに、マレーシア最大の発行部数を誇る英字紙ザ・スターは、世界193カ国のうち、パレスチナへの同情や連帯を表明したSNSユーザーの書き込みが、アメリカに次いでマレーシアが2番目に多いことを指摘(データ出典:Brandwatch/Global data from Apr 19 to May 19)。

エルサレムでの衝突が目立ち始めた4月19日からの1カ月間で、パレスチナへの連帯を示した合計3126万件(世界193カ国全体)の書き込みのうち、国別トップである124万件のアメリカに肉薄して、2位のマレーシアは118万件の書き込み数を記録していた。

参考までに、27位である日本は7万5400件ほどであり、人口約3200万人と日本の約4分の1でしかないマレーシアにおいて、どれだけ関心が高いことかが見て取れる。

いったい、なぜか。

ラマダン中にSNSで沸騰したパレスチナ問題

衝突が起きたのは、普段にも増して信仰心が深まる断食月(ラマダン)の最中だった。マレーシアは国民の約6割がイスラム教徒であるイスラム教国家。東南アジアでも先進国入りを目指す発展著しい国家とあって、ソーシャルメディアを日常生活のあらゆるシーンで使いこなす層が多い。今回イスラム系の市民らを中心にフェイスブックやツイッター、インスタグラムに至るまで、パレスチナへの連帯を示すハッシュタグでSNS上が埋め尽くされていくのに時間はかからなかった。

パレスチナ人に寄り添った平和的な書き込みも多い一方で、「#Israelterrorist (イスラエルテロリスト)」や「#ShameOnYouIsrael(イスラエルは恥を知れ)」など、イスラエルへの敵意をむき出しにしたハッシュタグも爆発的な勢いで拡散した。

1日に1人で100件以上のパレスチナ支援のハッシュタグを拡散する若者らも出現し始めた。ザ・スター紙の報道によると、この衝突以降の短期間で2000件以上もパレスチナ関連のハッシュタグを広めた強者もおり、現に筆者のマレーシア人の知人らで構成されるSNSグループ内でもパレスチナへの連帯やイスラエルの敵意を表すコメントなどで連日埋め尽くされるほどの状態となった。

そのほか、「(イスラエル発の地図アプリ)“Waze”を今すぐにスマートフォンから削除しよう」と呼びかける者や、イスラエルを支援するアメリカの製品だからコカコーラをボイコットしよう!などという動きも広がった(コカコーラ社のマレーシア現地法人が、国内で販売されるコカコーラはマレーシアで生産されており、マレーシアでボイコットをしてもローカルの従業員の雇用が失われる結果になるなどと対応に追われた)。

いつの間に設置されたのかパレスチナへの寄付を呼びかける巨大な看板が道路上に掲げられるなど、停戦に至る前までのこの短期間にパレスチナ問題への関心は急速に高まった。この動きを受けて、在マレーシアのパレスチナ組織代表も「SNSを通じたマレーシアの皆さんのサポートは確実にパレスチナに届いている」と、マレーシア人のSNS上での“健闘”を最大限の謝辞で讃えたほどだ。

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