パレスチナ問題「日本人が知らない」世界の報じ方 中東の火種が東南アジアのSNS上で沸騰の理由
パレスチナ問題に関しては、国家や宗教によってその捉え方は180度異なる複雑なものであり、自国の報道だけを見ていてもその全容にたどり着くことは容易ではなく、その糸を解きほぐすことは限りなく困難だ。
そもそも、今回衝突が激化して大規模な武力衝突になった発端は、エルサレムでの衝突が拡大したことを受けて、ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスがパレスチナの人々と聖地を守ると宣言、5月10日、ロケット弾攻撃に踏み切ったことにある。イスラエル軍は即座に空爆で応戦、被害が広がった形だ。
この「先制攻撃」を仕掛けたとも言えるハマスは、日本ではテロ組織に指定されている。しかし、気を付けなければならないのは、世界各国がテロ組織だと認定しているわけではない点だ。イスラエルは言うまでもないが、アメリカやヨーロッパ諸国などをのぞけば、イスラム教国家を中心に世界ではハマスは正式にテロ組織とはみなされておらず、むしろ支援している国家も少なくない。
現に、SNS上でパレスチナへの連帯が急速な盛り上がりを見せたマレーシアでももちろん、ハマスはテロ組織に指定されておらず、実際にハマスとマレーシア政府との結びつきの強さも随所に垣間見える。
国家や宗教によってとらえ方がまったく異なる
マレーシアのムヒディン首相は、ハマスの指導者、イスマイル・ハニヤ氏から直々に電話を受けたことを明かし、絶え間ない苦境に晒されているパレスチナ人への憂慮を示したところ最大限の感謝を表されたと明らかにしている。そのうえでムヒディン首相は、「マレーシア国民に代わって、イスラエル軍による卑劣な攻撃により犠牲となったパレスチナの人々への哀悼と悲しみの意を伝えた」と、自身のフェイスブック上でコメントした。
ハマスをテロ組織として指定している日本からすると、ハマスから直接の電話を受け「感謝」を表されていることがトップニュースになる状況は一瞬理解しがたいものだが、まさに国家や宗教によってそのとらえ方が全く異なり、だからこそ、ある一方からの情報だけを鵜呑みにすると多面性を欠いた見方に偏ってしまう危うさをはらむのがパレスチナ問題だ。
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