車載電池世界大手の寧徳時代新能源科技(CATL)が7月に自社開発のナトリウムイオン電池を発表する。5月25日、財新記者による取材に同社が事実であると認めた。ナトリウムイオン電池の原理は現在主流のリチウムイオン電池とよく似ている。両方とも、正極と負極の間を金属イオンが移動することで、充放電が可能になる。両者の最大の違いは材料だ。
新製品の具体的な情報については、CATLはまだ明らかにしていない。中国の証券会社である華安証券の調査レポートによれば、ナトリウムイオン電池には、中国の電池業界が外国の(一部の国に偏在する)リチウム資源に依存している状況を打破できるメリットがあるという。
ナトリウムは地殻中で4番目に多い元素だ。リチウムイオン電池の電解液の材料であるリチウム塩をナトリウム塩に、(負極の基盤に用いる)銅箔をアルミ箔に置き換えることでコストの引き下げが可能になる。
一方でナトリウムイオン電池には、技術面におけるボトルネックがある。前出の華安証券の調査レポートによると、電気化学の特性が妨げとなり、現時点では1キログラム当たり90~140Wh(ワット時)のエネルギー密度のナトリウムイオン電池しか試作できていない。これは鉛蓄電池のエネルギー密度よりは高いが、リチウムイオン電池には及ばないレベルだ。
量産化には課題も山積み
ある中国大手の電池企業の技術責任者は財新記者の取材に対し「ナトリウムイオン電池の特性を考えると、(航続距離を長くするために、エネルギー密度の高さが要求される)電気自動車(EV)向けではリチウムイオン電池に取って代わるのは困難だ。しかし(農村市場向けの)低速EVや、蓄電などエネルギー密度が高くなくてもよい領域では一定の潜在市場があるだろう」と語った。
だが、ナトリウムイオン電池の製造プロセスは多くの改善が必要だ。前出の技術責任者は「ナトリウムイオン電池の研究は10数年続いているが、量産実現のメドはまだ立っていない。生産コストは現時点ではリチウムイオン電池よりも高く、量産が可能になった段階でしか将来の価格水準は確定できない」と説明した。
前出の華安証券の調査レポートでは、数年先も電池の主流はリチウムイオン電池であり、市場はさらに急拡大する可能性もあると見ている。同レポートではリチウムイオン電池の生産規模が、2021年には400GWh(ギガワット時)、2025年には1400GWhのレベルに達すると予測している。
(財新記者:劉雨錕)
※原文の配信は5月25日
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら