日本サッカー界「YouTubeテコ入れ」の切実な事情 観客制限が続き「サッカー離れ」に危機意識
森保一監督やキャプテンの吉田麻也(サンプドリア)らの移動、朝の散歩、食事風景、練習前後の様子、試合前のロッカールームの熱気など、外側からでは見れない動きが20分程度でコンパクトにまとめられた動画は非常に興味深い内容だ。が、意外にも再生回数は10~20万回中心。ハイライト映像や国民の関心事だった3月25日の日韓戦は50万回超えを達成したが、動画の中で吉田自身が「もっと伸びてもいいよね」とコメントするほど、爆発的な状況にはなっていないようだ。
小暮部長は話を続ける。
「いいものであってもいかに知ってもらえるかがやはり大事。ここまではSNSやJFAのメールマガジンで告知し、上記の③に当たるコアファンに定着させることを念頭に置いていました。ですが、今後はサッカーメディアとのタイアップなどを活用しながら、より広い層への認知を図っていく考えです。
その戦略を練るうえでやはり重視すべきなのが視聴者の声。ユーチューブにはコメント欄があり、さまざまな投稿が寄せられますが、ヒントはそこに隠されている。ご意見ご要望を大切にしていきながら、より魅力的なコンテンツを作っていきたいですね」
ウォーミングアップをライブ中継
彼らが模索するのは動画展開だけではない。オンラインツールを使った新規ファン獲得にも着手している。
その一例が「自宅からの応援体験 The Blue XR」。3月26日に東京・味の素スタジアムで行われたU-24日本代表対U-24アルゼンチン戦の際、試合前のウォーミングアップをau XR Doorアプリを使ってライブ視聴できる試みを実施したところ、アプリダウンロードが3500、実際の視聴が600という数字になった。傍目から見るとまだまだ少ないように映るが、協会としては新たな一歩を踏み出せたと前向きに受け止めているという。
スタジアム観戦機会が以前のように自由には持てない中、視聴者が実際に会場にいるような臨場感を体験できれば、興味を抱く人の数は増えるはず。特にITに慣れている若年層には効果的だろう。
多種多様なハイテクツールを駆使して、ファンとの絆を深めていかなければ、コロナ禍の逆風は乗り越えられない。日本のスポーツ界で野球に次ぐ人気を誇るサッカー界がそういった危機感を示すことで、他競技にも前向きな刺激がもたらされる可能性は少なくない。
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