埼玉・小川町メガソーラー設置めぐる大混乱の深層 住民への説明・周知の手続きは適切だったのか

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メガソーラーの説明会開催をめぐって起きたトラブルとは?(写真:YsPhoto/PIXTA)

ようやく脱炭素に舵を切った日本は再生可能エネルギーの普及拡大を急ぐしかない。それを危うくする事態が全国各地で起きている。再エネ発電事業者と地域住民の紛争だ。埼玉県小川町のメガソーラー建設計画では、国の環境アセス制度の手続きで必要な説明会をめぐり、住民と事業者の対立が続いている。地域住民との対話や共生が重要と政府は繰り返すが、「共生」にほど遠い現実がある。

参加者全員が説明会を途中退席、やり直し求めた

問題になっているメガソーラーは、小川エナジー合同会社(今年1月にエトリオン・エネルギー3合同会社から社名変更、埼玉県寄居町)が埼玉県小川町に建設を計画している「さいたま小川町メガソーラー」。事業区域の面積は86ヘクタール、山林を造成して太陽光パネルを敷き、出力3万9600kWの発電所を建設する。森林の伐採規模は29.9ヘクタール。埼玉県の条例により環境アセス手続きが進められていたが、昨年4月、太陽光発電所を対象に加える国の制度改正により、現在、国の環境アセス制度で手続きが進む。

小川エナジー合同会社は今年4月19日~5月19日に環境影響評価準備書の縦覧を行い、計4カ所で住民説明会を行った。ことが起きたのは、4月20日午後5時すぎ、小川町の小川町民会館「リリックおがわ」で開かれた説明会だった。

「説明会が始まる前に確認しておきたいことがある」と住民の1人が発言。「この説明会を開くことを地域住民に知らせたのか」と質問した。これを受け、事業者から「官報に掲載し、小川町役場にポスターを掲示し、ポスティングでチラシを配った」と説明があった。

これに対し、住民たちは反論。「地元では誰もチラシを受け取っていない」「私たちは、たまたま説明会開催を知った仲間の呼びかけで来た」という声が次々に上がった。

「初めからやり直してほしい」と、住民側は仕切り直しを要求。事業者側がコロナ禍への対応などを理由に「できません」と答えたため、「説明会をやったという辻褄合わせはごめんだ、みんな、出ていこう」と住民は声をかけあい、計47人が全員退席した。

これは、私がその場にいた住民の話から再現した様子だが、嵐山町の渋谷とみこ・議会議員が自身のブログにつづった内容と一致している(ブログあれこれ/小川町メガソーラー環境影響評価説明会を「やり直せ」ボイコット/2021年04月20日配信)。この日の説明会は、午後5時15分からと、午後7時からの2部制だったが、2回目の説明会も同様の結果になった。

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