埼玉・小川町メガソーラー設置めぐる大混乱の深層 住民への説明・周知の手続きは適切だったのか

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さいたま小川町メガソーラー事業についての環境アセス制度による手続き(当初は県条例に基づく手続き)が始まったのは、2020年1月。この時から約1年2カ月さかのぼる2018年11月、同じ場所に残土処分場を作る計画が浮上し、2018年12月から2019年6月にかけ、4回にわたる住民説明会が開かれた。

残土処分場を計画した「さくら太陽光センター合同会社」と、さいたま小川町メガソーラーの建設を計画している「小川エナジー合同会社」は中心的な業務執行社員が重なる。このため、地元では同じ事業者による計画が残土処分事業からメガソーラー事業に変わったとみており、反発が強まっていた。

林地開発を伴うメガソーラー事業で必要なこと

太陽光や風力など再生可能エネルギーによる発電設備の設置をめぐる地域紛争に詳しい東京工業大学環境・社会理工学院の錦澤滋雄准教授は「林地開発を含む大規模な事業だけに、相当数の住民が心配しているのではないか。その心配、懸念に対して事業者はきちんと説明できる材料を用意して、必要であれば事業計画を変更していくということをしないと、なかなか理解を得られないのではないか」と話す。

メガソーラー建設が林地開発を伴う場合、何が必要か。全国の事例を踏まえて指摘する錦澤滋雄准教授(撮影:河野博子)

また、全国の事例研究を踏まえ、錦澤准教授はこうも指摘する。

「再生可能エネルギーの導入拡大は国の方針で国民も理解している。ただ、(CO2などの温室効果ガスを減らす)気候変動対策として(CO2を吸収する)林地を大規模に開発するということには、疑問を感じる人が多い。

また、近隣の住民は土砂災害のリスクを心配する。もし将来、土地造成した事業地から土砂が流出するようなことになれば、訴訟リスクにつながる可能性もある。事業者には、外部の専門家にお願いして安全性を追加的に確認し、その結果を報告するなどの慎重さも求められる」

河野 博子 ジャーナリスト

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こうの ひろこ / Hiroko Kono

早稲田大学政治経済学部卒、アメリカ・コーネル大学で修士号(国際開発論)取得。1979年に読売新聞社に入り、社会部次長、ニューヨーク支局長を経て2005年から編集委員。2018年2月退社。地球環境戦略研究機関シニアフェロー。著書に『アメリカの原理主義』(集英社新書)、『里地里山エネルギー』(中公新書ラクレ)など。2021年4月から大正大学客員教授。

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