日本人は自動運転規制の塩梅の重要性を知らない 19世紀の「赤旗法」ごとく競争力を削がないために

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現行の道路交通法では、高速道路で60km/h以下の条件下でドライバーがいつでも運転を代われる状態にあり、かつ作動状態が記録されている場合に限って自動運転を許可しています。現行技術に際して私は妥当な法律だと思っています。

一方、ここで私が思い出したのが19世紀の「赤旗法」です。赤旗法とは1865年のイギリスで成立した道路交通に関する法律です。建前としては自動車事故からロンドン市民を守るために立法され、内容としては「自動車は市街地では3km/hの速度を守り、前方に赤い旗を持った告知人が歩かなければならない」というものです。

なぜこの法律を思い出したのかというと赤旗法が産業革命で世界の頂点にあったイギリスが、ドイツやフランスに追い越される原因を作った法律だともいわれているからです。規制は人命を守るとともに、一国の経済の未来をも左右する。わが国の道路交通法は今、日本経済の未来を左右する段階に来ている。そのことを今回の記事では問題提起したいと思います。

運転支援機能の過信、誤用を防ぐため

これまで日本では運転支援機能全般を「自動運転」と呼ばないようにするという注意喚起が繰り返しなされています。これは運転者が運転支援機能を過信したり誤用したりするリスクがあることからも妥当な話ではあります。この件でよく引き合いに出されるのがアメリカで起きた死亡事故です。EV(電気自動車)メーカー、テスラの車が自動化レベル2相当の運転支援機能である「オートパイロット」を使った走行中に事故を起こして搭乗者が死亡した事故が大きく報道されたのは少なくとも2件あります。

報道ベースの情報で整理すると、2016年のフロリダ州の事故ではテスラ「モデル3」が道路を横切っていたトレーラーの車体に気づかず猛スピードで荷台の下に突っ込みました。車が大破したためドライバーがオートパイロット機能を使用していたかどうか不明なのですが、自分で運転していたとしたら目の前にトレーラーがいたことは見えたはず。事故原因について白いトレーラーの車体をオートパイロット用のカメラが認識できなかったのではないかと、当局は結論を出したようです。

今年4月にテキサス州で起きたテスラ「モデルS」の死亡事故では、大破した車両の中で、運転席には誰も座っていなかったことが波紋を呼んでいます。事故を起こしたテスラ車に搭載されていたのは半自動運転システムで、FSD(完全自動運転)オプションをこの車は購入していなかったとテスラのイーロン・マスクCEOはツイートしています。

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